研究概要 |
1次元(1D)エキゾチックナノカーボンの電子輸送特性を,本研究予算で立ち上げたin situ温度可変(30-350K)四探針測定装置を用いて調べた。最初に,膜厚1000nmの1Dエキゾチックナノカーボンをex situ(30分大気暴露)で電子輸送特性を測定し,シート抵抗の温度に対するアレニウスプロットした結果,140K以上では熱励起型ホッピング(TEH)機構を,それ以下では2D可変領域ホッピング(VRH)機構を,それぞれ示すことを明らかにした。つぎに,同じ膜厚で作製した1Dエキゾチックナノカーボンをin situで測定し解析した結果,140K以上では同様にTEH機構であるが,シート抵抗はex situに比べて2桁以上低い値であった。また,140K以下ではシート抵抗はex situと比べて4-5桁さらに低い値になり,しかも,シート抵抗が温度に対して依存せず一定であることを見出した。 理論的側面では、同材料のキャリア緩和ダイナミクスを記述する新規理論の確立を図った。従前のボトルネック理論がもつ矛盾点を初めて指摘し、横波フォノンモードの寄与を取り入れて同理論を再構築した結果、既存の実験データが示す緩和時間の単調増大現象を定量的に再現することに成功した。さらに当年度の研究では、同材料が示す電荷密度波転移の発現機構が、系の電子物性およびフォノン物性に作用する幾何形状効果で理解できることを初めて明らかにした。
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