酵素タンパクゆえの環境低負荷条件での高度な触媒機能を小分子レベルで再現することができれば、グリーンケミカルプロセスの実現に大きく寄与できる。小分子の中に酵素類似機能を組み込むために、複数の小分子に酸と塩基を適切に配置し、酸・塩基のしなやかな動的相互作用を利用して酵素レベルの触媒機能を小分子で制御する。単一小分子触媒の精密設計と超分子化学の分子を繋ぐ技術を基盤として、酵素類似の分子包接機能を組み込む。従来の小分子触媒には不向きな分子包接効果による基質選択的または立体および位置選択的な不斉触媒反応を指向したオーダーメイドな酸・塩基複合型の動的小分子触媒を開発することが本研究の目的である。当初の計画通り、平成21年度は酸・塩基複合塩触媒のBronsted酸を活用する触媒設計を重点的に開発した。特に、キラル酸にはビナフチルジスルホン酸、及びビナフチルリン酸を用いた。酸・塩基結合により反応点を効果的にやわらかく被い、基質や反応剤をしなやかな動きで包接する動的挙動に着目した。アキラルな塩基または酸のキラルな酸または塩基に対する混合比は、触媒反応系にあわせて系中の平衡でダイナミックに最適化される。この原理により、オーダーメイドの触媒調製の実現を目指した。シンプルな操作で触媒の多様性が生じる点は超分子化学技術を取り入れた効果である。その結果、不斉マンニッヒ型反応及び不斉Aza-Friedel-Crafts反応で分子包接効果による触媒システムの構築に成功した。
|