酵素タンパクゆえの環境低負荷条件での高度な触媒機能を小分子レベルで再現することができれば、グリーンケミカルプロセスの実現に大きく寄与できる。小分子の中に酵素類似機能を組み込むために、複数の小分子に酸と塩基を適切に配置し、酸・塩基のしなやかな動的相互作用を利用して酵素レベルの触媒機能を小分子で制御する。単一小分子触媒の精密設計と超分子化学の分子を繋ぐ技術を基盤として、酵素類似の分子包接機能を組み込む。従来の小分子触媒には不向きな分子包接効果による基質選択的または立体および位置選択的な不斉触媒反応を指向したテーラー・メイドな酸・塩基複合型の動的小分子触媒を開発することが本研究の目的である。平成23年度は、当初の計画通り、平成22年度に行なったブレンステッド酸・塩基複合塩触媒の開発を継続したとともに、新たに共役型の酸・塩基結合形成による立体効果と共役系電荷の分極を活用して酸または塩基の反応活性を自在に増幅できる触媒の開発を行なった。しなやかな酸・塩基複合型触媒を開発し、不斉アミナール合成、不斉シアノ化合成、不斉ヒドロホスホリル化反応、不斉Diels-Alder反応、エステル交換反応の開発に成功した。シンプルな操作で、幅広い触媒反応に対応できるシステマティックな触媒体系を確立できたのは、触媒の多様性が生じる超分子化学技術を取り入れた効果である。
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