研究課題/領域番号 |
21200034
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
中野 幸二 九州大学, 大学院・工学研究院, 准教授 (10180324)
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キーワード | ナノバイオ / DNA / 自己組織化 / 分子認識 / バイオセンサー / 遺伝子センサー / 分子エレクトロニクス / 走査プローブ顕微鏡 |
研究概要 |
前年度までの検討で、DNAデンドリマー自己組織化膜をくし型電極に組み合わせれば数十pAレベルでの電流測定が可能であることを明らかにした。今年度は、DNAユニットの化学構造の工夫も含めてより詳細に検討した。 まず、3種類の26量体オリゴヌクレオチドを用いて、DNA分岐構造の一種であるThee-Way Junction(TWJ)ユニットを形成させた。TWJユニットは、末端が自己相補的な1本DNAとなっており、これが付着末端となってデンドリマーを形成する。しかしTWJユニットは、通常の二重鎖DNAと同じく、水素結合で結びついているだけなので高温になると解離してしまい、安定して用いることができない。そこで、付着末端には光架橋性のソラレン分子を導入し、共有結合性のデンドリマーを形成するように工夫した。原子間力顕微鏡観察、水晶振動子センサーを用いた微小重量測定、赤外分光法などにより検討した結果、今回のTWJユニットは、固体基板表面で自己組織的に成長し、直径50nm程度の半球ドーム型のデンドリマー超構造を与えることがわかった。このようなDNAデンドリマーの例は過去に報告がなく、Bottom-up型のDNA超分子材料として大変有望である。 次に、線長2.4mm、線幅・ギャップ長とも2μmのラインアンドスペース電極(くし形電極、電極対65個)と組み合わせて電圧-電流特性を評価した。電極ギャップ間にDNAデンドリマーを形成させ、真空下で測定したところ、±10Vの印加で60pA程度のオーミック応答を示し、センシングデバイスに適した特性を持つことがわかった。さらに、デンドリマーにフェロセンを結合させると、電気伝導性は大きく向上した。なおデンドリマーへのフェロセン導入は光電子分光法、各種電気化学測定により確認できている。 以上の成果をもとに、研究の最終段階であるin-situ電気伝導性修飾の実験に着手した。原子間力顕微鏡を用いたディップペン法を中心に各種検討したが、カンチレバーでDNAを損傷してしまうことが多く、残念ながら良好な結果を得るには至っていない。しかし、当該の研究により新しいDNAナノ材料の開発に成功し、また基本的な実験系が確立できたので、引き続き実験を継続する予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
申請時に計画したDNA自己組織化膜では、単純にギャップ型デバイスに組み込んでも実用に適した電圧-電流特性を示さなかった。このため、急遽DNAデンドリマーの利用に切り替える必要が生じた。また、in-situでの電気伝導性修飾法が確立できていない点も課題として残った。しかし、従来にないDNAナノ構造体を確立できたことは予想外の成果である。一方、いろいろなDNA自己組織化膜を原子間力顕微鏡により調べる過程で、従来にないラベルフリーハイブリダイゼーションアッセイ法・SNPアッセイ法が確立できたことも関連の成果として特筆できる。以上の理由により、上記の判定とした。
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今後の研究の推進方策 |
当該の研究期間は終了したが、新しいDNAナノ材料の開発に成功し、また基本的な実験系が確立できた。そこで、in-situでの電気伝導性修飾、およびセンシングデバイス化について、引き続き実験を継続する予定である。
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