まず、今年度は、次年度以降に本格的に実施する予定の低温実験に向けて、液体ヘリウムを用いた低温実験を長期間にわたり実施していくための装置機器を導入および設置し、低温実験環境の整備と拡充を行った。来年度導入予定のヘリウム再凝縮装置本体と合わせ、来年度後半には低温実験を長期間にわたって実施できる見通しを得た。 次に、マイクロ波近接場を利用したマイクロ波顕微鏡の空間分解能を高性能化するために、電磁界シミュレーターを用いて電磁界解析を行った結果に基づき、試料ステージ部分に大幅な改良を加えた空洞共振器を作製した。室温環境下において性能評価を行うために、絶縁体基板に金ペーストで高導電部を部分的に作成したテスト試料を用意した。金属探針をテスト試料表面に近づけ、金属探針と垂直方向に試料を移動させながら、空洞共振器の共振特性の変化を測定したところ、試料表面部の導電性変化に対応する共振周波数の変化の検出に成功した。金属探針と試料表面間の距離が小さいほど大きな変化が検出されることから、指数関数的に減衰していくマイクロ波近接場を利用した測定原理が有効に機能している可能性が期待された。しかしながら、現段階では定量的な再現性に若干の問題が残ることが判明した。これには金属探針と試料表面間の距離を定量的にモニターする必要があることも分かった。現在、モニター用の光学センサを導入する計画を検討中であり、来年度は出来るだけ早い段階で導入し、室温での顕微鏡動作確認を達成後、低温動作化に向けた装置開発に取り組んでいく予定である。
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