今年度はヘリウム再凝縮装置を導入し、絶対温度4ケルビンでの低温環境の長期維持および絶対温度0.5ケルビンの極低温実験環境の構築に成功した。これにより、固有ジョセフソン接合を用いたジョセフソン量子ビット構築の基盤となる巨視的量子トンネル効果の実験および離散化量子準位の観測実験を実施することができた。 一方、マイクロ波近接場を利用したマイクロ波顕微鏡の開発に関しては、金属探針と試料表面間の距離をモニターするために光学センサを導入し、駆動ステージの再現性を定量的に検証した。絶縁体基板の一部に金ペーストを塗布した試料とアルミ蒸着膜の2種類のテスト試料を用意し、金属探針をテスト試料表面に十分に近づけながら、試料表面の電気伝導性の変化に伴う共振特性の変化を詳細に調べたところ、金ペーストを一部塗布したテスト試料では共振周波数の変化の検出に成功したが、アルミ蒸着膜試料では検出できなかった。これは、マイクロ波の表皮深さに比べてアルミ蒸着膜の膜厚が小さすぎて共振周波数の変化が検出限界以下であったためと考えられる。次年度は、入力マイクロ波と出力マイクロ波の位相情報も測定可能なベクトルネットワークアナライザを導入し、共振特性の変化を位相情報の変化から検出する方法を試み、測定感度の向上を目指す。
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