研究課題/領域番号 |
21200035
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研究機関 | 青山学院大学 |
研究代表者 |
北野 晴久 青山学院大学, 理工学部, 准教授 (00313164)
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キーワード | 超伝導材料・素子 / マイクロ波近接場 / 量子相転移 / 量子もつれ合い / ジョセフソン接合 |
研究概要 |
Bi系高温超伝導体の固有ジョセフソン接合をジョセフソン量子ビット系に選択し、超伝導空洞共振器をマイクロ波光子系に選択した場合の空洞共振器構造について検討した。現時点では、固有ジョセフソン量子ビット系における二準位系のエネルギーギャップの大きさを設計したり外部制御する手段が確立していないため、両者を結合させるには超伝導空洞共振器の動作周波数を広範囲(40GHz~65GHz)に、かつ極低温下で調整できる機能を付加する必要がある。さらに、ジョセフソン量子ビット系とマイクロ波光子系の結合強度を極低温下で調整する機能も要求される。このような調整機能は誘電体や金属探針を空洞内に挿入/抜出する駆動機構の導入により実現可能と見込まれたが、絶対温度1ケルビン以下の極低温で実施する場合は、駆動機構の設置スペースや熱設計の観点から予想以上に困難なことが判明した。このため、超伝導共振器の設計・試作については一旦延期し、固有ジョセフソン接合における二準位系のエネルギーギャップ制御を目指して、二準位系エネルギーギャップを支配するジョセフソンプラズマ周波数を直接決定するための測定装置開発に取り組んだ。現在、超伝導転移温度近傍でジョセフソンプラズマ共鳴の観測実験を進めている。次に、マイクロ波顕微鏡の更なる性能改善として、ズームレンズとベクトルネットワークアナライザを導入し、アルミ金属とガラス誘電体の多層膜試料による動作試験を室温で行った。ズームレンズの導入により、金属探針の試料表面からの位置制御の分解能が飛躍的に増大し、マイクロ波測定の感度向上に成功した。その結果、多層膜試料におけるアルミ金属とガラス誘電体の表面電気伝導性の変化に伴う共振特性の急峻変化の検出に成功した。今後は、現在の電力振幅測定に加えて入力マイクロ波と出力マイクロ波の位相変化測定にも取り組み、有機伝導体の相分離現象を観測するための低温動作用装置開発と測定結果から誘電率や電気伝導度など物質定数を求める解析技術の開発に取り組む予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
マイクロ波顕微鏡の室温動作試験に予想以上の時間を要したこと、および固有ジョセフソン量子ビット系とマイクロ波光子系の量子エンタングルメント実験を実施する場合に必要な技術課題が予想以上に困難だったためと判断される。
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今後の研究の推進方策 |
マイクロ波顕微鏡については基本的な室温動作試験に成功したので、その成果を発表すると共に、装置の低温動作化と測定感度向上に取り組み、有機伝導体の相分離現象の観測に挑戦する。また、極低温下の量子エンタングルメント実験については、固有ジョセフソン量子ビット系の細かい制御技術開発を進めた後、再度、超伝導空洞共振器の開発に取り組み、量子エンタングルメント状態の生成実験に挑戦する予定である。
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