B6およびMSM両系統間のエピゲノム・バリエーションを明らかにするため、それぞれから肝臓DNAを調製し、MBDタンパク質を用いてメチル化DNA領域を濃縮した。それらをAffymetrix社のマウス・プロモーター・タイリングアレイにて解析したところ、百数十の領域において系統間に顕著な差が見られた。しかしながら、それらの候補領域をバイサルファイト法(調べる領域は限られてしまうが、定量性が格段に高い)によって確認したところ、調べた限りではどの領域でも系統間のメチル化差はなかった。つまり、マイクロアレイではノイズが多く、そのままでは真の系統間差領域を同定できないと考え、次に濃縮DNAプールをIlumina社のSolexaを使って、大量にシーケンシングした。現在、シーケンスデータを解析しているところである。また、DNAメチル化の差と遺伝子発現の差の関係を調べるため、両系統から肝臓RNAを調製し、完全長cDNAの5'末端の大量シーケンシングを行った。この解析により、肝臓で発現しているmRNAの転写開始点が網羅的に同定できるとともに、その使用頻度も定量化することができる。現在、シーケンスまでは終了しており、データを解析しているところである。 同様にして、生殖細胞である精子のDNAについてもメチル化状態の比較を行った。両系統から精子DNAを調製し、MBDによる濃縮後、マイクロアレイにハイブリダイズさせた。現在、強度データを解析しているところである。ただし、肝臓でのマイクロアレイの結果を考慮すると、次年度において大規模シーケンサーによる解析をしないといけないだろうと考えている。
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