目的は、核膜構造が転写調節に関係し、多様な生命現象の制御を可能にすることを明らかにする事にある。この目的を効果的に達成するためには、核膜構造と多様な生命現象の相互作用を示すための有用なモデル因子が必要であり、幾つかの因子を用いて研究を行っている。 研究代表者、大場等は、エストロゲン受容体との融合タンパク質を活用した活性操作系を用いて、新規の多様な生命現象の制御を可能にする有用な実験系を確立した。この実験系により、転写因子IκB-ζ自身の転写後制御に従来では知られていなかった。IRAK-1/4から分岐されるシグナル伝達系を明らかにし、論文発表を行った。 大熊等、埴原等によって学会発表が行われた転写因子IκB-ζは、刺激により活性化された転写因子NF-κBの作用により発現され、クロマチンの構造変化を伴って、NF-κBと共に特定の遺伝子の発現調節を行っている。我々は、IIκB-ζが多様な生命現象に関係することを明らかにした。個体としての表現系としては、IκB-ζノックアウトマウスは皮層の異常を示す。更に、非リンパ球においてIκB-ζの欠損が自己免疫応答を引き起こすことを発見した。また、B細胞抗原受容体刺激においても、転写制御と転写後制御を介したIκB-ζの発現誘導が行われていることを明らかにした。刺激を起点として、クロマチンの構造変化、核内の遺伝子調節をダイナミックに行うIκB-ζは、核膜構造が多様な生命現象の制御を行う転写因子の有用なモデルの一つだと考えられたことにより、核膜構造変化に伴うIκB-ζの活性についての研究を行い、また各発表者と連携して研究を行い、学会発表を行った.
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