研究概要 |
ヒトゲノムDNAには遺伝子コピー数の変化(copy number variation : CNV)が存在する.その中の幾つかのCNVの変化が疾患発症の原因となることが知られている.一方,小家系のサンプル収集のみが可能な遺伝性神経疾患には原因遺伝子が未同定な疾患が数多く存在している.本研究では,遺伝子未同定の遺伝性神経変性疾患の小家系に着目して,CNV異常による新規の遺伝子変異を探求することを目的としている. 本年度は遺伝子解析の対象となる家系サンプルの集積とサンプル品質のチェックを行った.特に今年度は認知症性疾患のサンプルに焦点をあて解析を進めた.アルツハイマー型認知症の病型を呈した患者では,APP,PSEN1,PSEN2,MAPTの塩基配列を解析し既知の遺伝子変異の除外を行った.またレビー小体型認知症の患者サンプルにおいては,SNCA,parkin,PINK1,DJ1,PLA2G6の既知の遺伝子変異を除外した. 既知の遺伝子変異が除外されたサンプルの内,12サンプルについてDNAチップを用い網羅的なCNV解析を行った.網羅的な解析には,Human OmniExpress Chip(Illumina)を用いた.このHuman OmniExpress Chipには,733,202の一塩基置換多型(SNPs)が平均4.1kb間隔に全ゲノム上に配置されている.この網羅的なDNAチップ解析により以下の点が判明した.1)健常人においてもCNVが複数存在する,2)健常人毎にCNVが存在する領域は異なる,3)患者の中には健常人に存在しないCNV領域が存在する,4)血族結婚がある劣性遺伝型の患者ではホモ接合体領域が検出できる.さらに,KaryoStudioを用いた解析により,患者特異的に存在するCNV領域の遺伝子群を検出した.
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