研究概要 |
遺伝子コピー数多型(CNV:copy number variation)とは,通常1細胞あたり2個(コピー)ある遺伝子の数が,1個(コピー)しかなかったり,3個(コピー)以上存在したりする遺伝子の数の個人差のことをいう.遺伝子コピー数の変化により生じる遺伝子変異として,欠失や重複が知られており,これらの変異は神経疾患の発症の原因となることが明らかにされている.本研究では,原因遺伝子未同定の遺伝性神経変性疾患の小家系に着目して,CNV異常による新規の遺伝子変異を探求することを目的としている.本年度は24家系の遺伝性神経変性疾患の発端者のゲノムDNAを用いてDNAチップを用いた網羅的な解析を行った。DNAチップとしては,Human Omni Express Chip(イルミナ)を用いた解析を行った.このDNAチップを用いて健常者におけるCNVを検討すると,健常人においてもCNV領域が複数存在していたが,その領域は健常者毎に異なっていた.患者群でのCNV領域についてKaryoStudioを用いて健常者の比較を行ったところ,患者特異的に存在するCNV領域を複数検出した.DNAチップで検出したCNV領域については,TaqManプローブによるリアルタイムPCR解析を行ったところ,両者は良好な相関を示した. 候補遺伝子的なアプローチについては,遺伝性タウオパチーが疑われる症例において,タウ遺伝子異常を認めない症例について,タウ遺伝子量の解析をTaqManプローブを用いたリアルタイムPCR法により解析を行った,健常者のタウ遺伝子コピー数と比較して,明らかなコピー数の増減は遺伝性タウオパチー症例には見いだせなかった.
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