研究課題/領域番号 |
21200045
|
研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
佐藤 仁 東京大学, 東京大学・東洋文化研究所, 准教授 (50313010)
|
研究分担者 |
下村 恭民 法政大学, 人間環境学部, 教授 (60241923)
池本 幸生 東京大学, 東洋文化研究所, 教授 (20222911)
|
キーワード | 対日援助 / 資源政策 / 日本の経験 / 対外援助 |
研究概要 |
初年度の目標の一つは、共同研究としてのまとまりを醸成する活動であった。研究分担者が意見を交換し、研究の方向性と情報を共有するために定期的に会合の場を設定した。具体的には、藤倉・中山報告による「援助される日本・援助する日本根釧パイロットファーム調査報告」、佐藤報告による「対外援助と国内事情-戦後日本の「ドナー化」と中進国への示唆-」と題した発表を行い、議論を交わした。 資源政策と対外援助創成を結ぶ視点の研究成果としては、1950年代の日本で対外援助の必要性が議論されていたと同時に、国内資源の高度利用も重要な政策課題として議論されていたことを資料調査から明らかにした。加えて、中進国としての日本の援助が、国外からだけでなく国内からも自国の利益重視であるとの批判を受けていた点が明らかになった。対外援助と国内事情との結びつきは、今日の中進国に特有の現象ではなく、中進国であった日本においても共通に認められる側面であることがわかった。特に1950年代から60年代の日本には、対外援助と国内事情の双方に視野に向けていた政策担当者が存在していた事実は、今日の中進国による援助行為を理解する際の一つの参照点を提供してくれる。 対日援助研究では、世界銀行による日本の援助事例として、戦後の北海道で酪農専業経営の確立を目指した根釧パイロットファームの取り組みを調査した。幾つかの候補から援助案件が絞られる際の経緯、さらに、世界銀行による融資のコンディショナリティとなっていたジャージー種導入の経緯を、アメリカで入手した世銀の報告書と日本側の資料を合わせて明らかにした。また、現地調査では、北海道の地域特性に適さないジャージー種の導入が引き起こした離農と、その後に生じた経営規模の集約と拡大について聞き取ることができた。こうした経験が日本の対外援助に与えた影響の解明は次の課題である。
|