研究概要 |
平和と人権のためのビジネスとは何か。なぜ、地雷除去機の提供が好意的に捉えられる一方で、兵器を提供するビジネスは非難されるのか。同じように紛争に関わるビジネスであっても、なぜその評価は分かれるのか。本研究は、紛争(後)社会で(1)どのようなビジネスの業態が存在し(2)紛争や平和にどのような影響を与え、(3)誰の目からどのように評価されているのか、の3点を国連の平和活動との関係に絞り、紛争、人の移動とガバナンスの相互作用を軸に検討し、人権のための平和構築研究に新境地を開き、その体系化をめざした。昨年度に引き続き、今年度もセミナー(4/9,4/14,5/24,6/21,10/7ほか)およびシンポジウム(10/8,10/15,3/16)の開催を通じて関係者との専門的意見交換や、関連する関心を有する参加者との研究交流を活発に続けてきた。テーマ的には、アフガン平和構築プロセスにおける政治支援とビジネスの関連、難民の第三国定住における雇用や職業訓練など持続可能性追求について日本の事例研究など、これまで当研究が取り組んできたものに加えて、3.11の東日本大震災後の原発と地域住民の共生の可否やその際に検討されるべき代替エネルギーやそれをめぐるビジネスの動向など、偶然にも日本を舞台に被災後の復興という文脈で提起されたガバナンスやビジネスをめぐる問題などにつき、幅広い議論がなされた。 本研究の推進において大きなテーマの一つであった関連アクターの研究対象・主体への幅広い取り込みについては、代表佐藤も中心的に関与した「人間の安全保障学会」の設立(9月)などもあり、実務者、NPO関係者などとの関係も拡大しつつ情報収集に務めながら、昨年度までの成果を踏まえたとりまとめが行われ、関係者から計18本もの論文・研究報告を集めた研究成果報告書を3月に出版した。
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