本年度はフォッサマグナ地域の断層ミュオン観測を行った。目標は表土下に隠れる断層の密度構造の可視化である。そのため、検出に用いる光電子増倍管及びプラスチックシンチレーターの購入を行った。これらの部材を組み合わせて、断層破砕帯観測用ミュオン検出器を構築した。結果として、断層破砕帯の密度構造の初の可視化を行うことに成功した。また、シミュレーションのために計算機クラスタの増強、そしてデータ解析用の計算機を購入することで、計算環境を整えた。そのため、従来の解析方法に加えて、対象となる断層破砕帯を透過してくるミュオン強度の時系列解析を行うことにより、破砕帯にしみこむ、雨水の直接可視化にも成功した。通常断層は航空機写真などで目視することが可能であるが、当該観測領域は地すべり地帯で、断層の地表情報は失われている。この成果はこのように地表に隠れる断層を可視化する方法として、重要であり、日経新聞、毎日新聞でも報道され、科学的意義だけでなく社会的意義も大きいことが伺える。成果はトムソンサイエンティフィックのインパクトファクターで地球科学分野で3位以内に位置するEarth and Planetary Science Letters誌に投稿され、受理された。また、光デバイスの購入、プラスチックシンチレーターの購入を行い、低消費電力型光デバイスを用いたポータブル宇宙線ミュオン検出器の開発も進めた。成果はヨーロッパ地球惑星連合大会(EGU)で論文発表された。日伊で共同開催した当該分野の国際研究集会では日本、フランス、イタリアの多数の研究者が集まり、活発な議論がなされた。その論文集を作成した。
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