研究概要 |
試料導入・反応・分離・検出からなる化学分析システムの小型化・集積化は,近年の計測科学の重要な課題となっている。これまでに,電気泳動用チップ,DNAチップ,免疫測定用チップなどが開発され,反応場や分離場の小型化・集積化が進む一方,検出システムの集積化については進展が遅れており,検出に使用されるレーザーや顕微鏡が大型かつ高価であるという共通した問題を抱えている。我々はこれまでに,無機LEDをオンチップ化した蛍光検出システムを開発しているが,さらなる小型化やアセンブリーの低コスト化は容易ではなく,新しい光源や検出系の開発が求められている。そこで本研究では,小型で安価なマイクロチップ用蛍光検出システムを開発することを目的として,真空蒸着法やインクジェット法などの安価なプロセスによってプラスチック基板上に容易に作製できる有機ELデバイスを光源とする新規蛍光検出システムを開発する。 本年度はまず,有機ELデバイスの作製法を検討した。すなわち,発光材料としてtris(2-phenylpyridine)iridiumを用いたりん光有機EL素子を真空蒸着法により作製した。作製した有機ELデバイスは,ピーク波長510nmの緑色発光を示し,12Vにおける輝度32800cd/m^2,放射照度8mW/cm^2,最大外部量子効率13%の高効率なデバイスを作製できた。次に,マイクロチップの作製法について検討した。フォトリソグラフィーによりマイクロチップの鋳型となる基板を作製し,これを用いてPDMS製のマイクロチップを作製した。マイクロチップの流路に蛍光色素であるレゾルフィンの水溶液を満たし,作製した有機ELデバイスとCCDセンサを用いて蛍光検出システムを構築し,その性能を評価した。その結果,有機ELデバイスは,レーザーに比べて感度は劣るものの,蛍光検出システムの光源として十分使用可能なことが分かった。
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