研究概要 |
本研究は,小型で安価なマイクロチップ用蛍光検出システムを開発することを目的として,真空蒸着法やインクジェット法などの安価なプロセスによってガラスやプラスチック基板上に容易に作製できる有機ELデバイスと有機フォトダイオード(OPD)を用いる新規マイクロチップ用蛍光検出システムを開発するものである。 本年度は,検出素子となるOPDの作製法を検討するとともに,開発したOPDの分光感度特性を評価した。OPDの分光感度は光電変換層の吸収に大きく依存するので,目的の蛍光検出波長を600nm付近に定め,この波長領域に吸収帯をもつ銅フタロシアニンを光電変換層とするOPDを真空蒸着法により作製した。作製したOPDは500~800nmにわたって感度を有し,600nmにおける外部量子効率は0→1Vの逆バイアス電圧の印加により1.26→4.79%に向上することが確認された。 次に,作製したOPDによる化学発光測定について検討した。種々の濃度のHRP,ルミノールおよびp-ヨードフェノールを含む溶液と過酸化水素溶液をガラスセル内で混合し,発生した化学発光を自作OPDにより測定した。HRPの濃度が増加するにしたがってOPDの電流値が増加し,本研究で開発したOPDにより化学発光測定が可能なことが分かった。また,ポンプ,インジェクションバルブ,マイクロチップフローセル,LEDおよびOPDからなるフローインジェクション分析システムを構築し,銅-BDS錯体をモデル試料として,吸光度測定を検討した。その結果,自作OPDが吸光度測定の検出器としても利用可能であることが確かめられた。
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