1、解析対象遺伝子の追加 脳神経系の発生調節あるいは遺伝病の発症に関与する遺伝子として、昨年度解析したPax2/5/8等に加えて、さらにSix6、Soxファミリー、核内受容体ファミリー、NeuroDファミリー、Nkxファミリー、Mab21Lファミリー等を解析対象とした。また研究コミュニティーからの要望に応え、Pax/9も解析対象とした。 2、保存非コード領域の同定とそのエンハンサー活性の解析 選定した遺伝子についてゲノム配列の比較解析をおこない、ヒトからフグまで保存されている非コード領域を同定し、トランスジェニク実験によって初期神経胚期あるいは尾芽胚期のエンハンサー活性を調べた。その結果、例えばSix6の網膜エンハンサーやNeuroD6の終脳エンハンサー、Nkx6.1の脊髄エンハンサー、Pax1の咽頭嚢エンハンサー等、それぞれの遺伝子に対して組織特異性を担うエンハンサーを同定することができた。また、昨年度に解析したPax2/5/8遺伝子群の場合と同様に、5つのパラロググループ(Sox2/3、Nr2f1/Nr2f2、Nkx6.1/Nkx6.2、Mab21L1/2)について、それぞれのグループ内で相同なエンハンサーが保存されていることを発見した。例えば、核内受容体遺伝子Nr2f1のエンハンサーとNr2f2のエンハンサーはそのコア領域100bpの配列が67%保存されており、いずれも後脳で活性を示した。また、Nkx6.1とNkx6.2のエンハンサー配列も部分的に保存されており、いずれも脊髄で活性を示した。これらのエンハンサー活性の重複は、昨年度Pax2とPax5の間に発見したのと同様にダイナミックな発現補完のメカニズム(フェイルセーフ制御)が、パラログ間に一般に存在する可能性を示唆している。
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