研究課題
本研究では、オオムギの7対の染色体を1対ずつ付加したコムギ系統、および、コムギは摂食するがオオムギは摂食しないトノサマバッタ、コムギにはゴール(虫こぶ)を形成するがオオムギには形成しないフタテンチビヨコバイの累代飼育系を用いて、オオムギに含まれる有用な虫害抵抗性遺伝子を網羅的に探索することを目的とした。過去2年に引き続き、フタテンチビヨコバイによるゴール形成特性やゴール形成の適応的意義に関して、イネ科作物の幼苗を利用して解析を実施した。また、オオムギ染色体導入コムギ各系統のヨコバイに対する感受性の比較(草丈の萎縮、ゴール形成の程度)を実施した。本年度は特に、フタテンチビヨコバイが加害したオオムギ染色体導入コムギ各系統の、ゴール形成葉における植物ホルモンの発現動態や、各系統を摂食した際のフタテンチビヨコバイの発育を比較するとともに、ヨコバイによるゴール形成時に特異的に発現する植物側の遺伝子をマイクロアレイによる発現動態解析により探索した。一連の解析の結果、各系統間で、感受性や植物ホルモンの発現動態に顕著な違いが見られ、有効遺伝子の探索に向けて有益な成果が得られた。トノサマバッタに関しては、ふ化直後の一齢幼虫のオオムギ染色体導入コムギ各系統の選好性を選択実験やアクトグラフを用いた行動性の解析に加え、各系統を摂食させた際の生存率や発育速度を比較した。その結果、コムギ各系統間で、バッタの選好性や活動性、生存率や発育速度に有意な差が検出され、有効な遺伝子の探索に向けて有意義な成果が得られた。一連の成果を、国内外の学会大会で発表し、オオムギ染色体導入コムギ各系統のフタテンチビヨコバイ感受性に関する論文と、フタテンチビヨコバイによるゴール形成の適応的意義に関する論文を発表した。残りの研究成果も、随時学術論文として発表していく予定である。
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Evolutionary Biology
巻: 39(未確定)(印刷中)
10.1007/s11692-011-9150-7
Naturwissenschaften
巻: 98 ページ: 983-987
10.1007/s00114-011-0846-4