本研究は、オートファジー制御の上流のシグナル伝達系の解明、およびオートファジーを含む細胞内物流(メンブレントラフィック)制御による作物の自然免疫増強技術の開発が目的である。 1、Ca^<2+>/リン酸化を介したオートファジー制御機構(継続研究) 本年度は、イネにおける非常に定量性の高いオートファジー可視化系の再構築を進めるため、新たにOsATG5抗体を作成した。本抗体を用い、オートファジー定量の新たな指標として、OsATG5-OsATG12複合体の生成量にも着目し、検証を試みている。一方、酵母two-hybrid法により、OsCIPK15とOsATG5、相互作用因子であるPP2C(タンパク質脱リン酸化酵素)の結合部位を詳細に解析した結果、PP2CがOsCIPK15の基質として作用するだけでなく、OsATG5と共に、活性調節に関わっていることも判明した。 2、イネオートファジー欠損変異株の同定 本年度はイネオートファジー欠損変異株の取得を目指した。その結果、複数の欠損変異株の単離に成功した。現在、研究試料確保のため、後代種子の取得を進めている。 3、ケミカルバイオロジーによる植物防疫剤の選抜と耐病性検定(継続研究) 申請者が同定した数種の防疫剤候補化合物に関して、イネやシロイヌナズナ植物体を用いて、防疫剤としての効果検証を進めた。その結果、イネ及びシロイヌナズナの両者において、菌の増殖抑制効果が観察された。一方、多検体の同時測定が可能なルミノメーターを用いることにより、活性酸素種(ROS)を指標にした非常に効率的、且つ定量的な防疫剤スクリーニング法の確立に成功した。現在、スクリーニング及び選抜化合物を含む特許出願の準備を進めている(H23年度出願予定)。 本研究から得られた知見は、植物のオートファジー制御メカニズムの解明に貢献すると共に、新規防疫剤開発の基礎となる研究成果になると期待される。
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