研究概要 |
毒性の強い活性酸素種(Reactive Oxygen Species : ROS)は,形態形成・生体防御応答・環境ストレス応答など多様な生命現象の局面において,酵素により積極的に生成され,シグナル物質として利用されている.この積極的ROS生成を担う酵素が,Rbohである.本研究では,このRbohに着目し,ROSの生成制御機構および,積極的に生成されたROSの生理学的意義の解明を目的として研究を進めている.本年度,下記の点について明らかにした. 【AtRboh活性制御因子の同定】 酵母two-hybrid screeningによりAtRbohD, AtRbohFの相互作用因子を探索し,19種の候補因子を単離した.得られた候補因子をHEK293T細胞内で異種共発現させ,AtRbohD, AtRbohFの活性化制御への関与を調べた.結果,活性を昂進させる因子と,抑制させる因子を同定した.これらの結果は,複数の制御因子により,AtRbohD, AtRbohFの活性化が,厳密に制御されていることを示唆している. 【分子内相互作用による活性化制御】 AtRbohFのN末端領域とC末端領域が,酵母内において相互作用することを明らかにした.この結果は,両端領域の相互作用が,AtRboh活性化のきっかけになるという可能性を示唆するものである.今後,Ca^<2+>オシレーション下における,AtRboh活性化制御機構の解明につながると考えている. 【Ca^<2+>-ROSシグナルネットワーク解析】 AtRbohD, AtRbohFのCa^<2+>依存的な活性化は,蛋白質リン酸化酵素阻害剤K252aにより阻害されることを明らかにした.このことは,Ca^<2+>-ROSによるポジティブフィードバック制御において,Rbohのリン酸化により誘導されたROSがこのフィードバックの初発であるという,新規な概念を提唱するものである.
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