研究課題
我々はオーファン輸送体の中から生理活性脂質の輸送体を探索し、生理機能の解明を進め、並行してその3次元構造を明らかにすることで、両親媒性情報伝達物質輸送体の多様性と普遍性を明らかにし、細胞間情報伝達の研究に新たな領域を確立することを目指している。本年度はスフィンゴシン1リン酸(S1P)に光架橋剤を結合させた化合物を用いたアフィニティーラベリングにより見いだした蛋白質を同定し、そのタンパク質のS1P輸送活性を調べたが、有為な活性は見いだせなかった。また我々は昨年度ヒトS1P輸送体SPNS2がDH-S1Pを輸送する活性があることを明らかにした、そこで本年度は他の生理活性脂質の輸送活性を調べたところ、phyto-S1P、C17-S1Pを輸送することができるが、その脱リン酸化体は輸送できないことを明らかにした。さらに、S1P受容体に作用する新しい免疫抑制剤であるFTY720のリン酸化体もSPNS2が輸送活性を持つことを明らかにし、これら薬物の体内動態に重要な役割を果たすことを示した。また、ABCA型輸送体の1つであるABCA5の欠損マウスから調製した骨髄を移植した雌のLDL受容体欠損マウスにおいて有為にアテローム性動脈硬化になりやすくなることを見いだした。ABCA5欠損のマクロファージからのApoA1依存的なコレステロールの放出が増加し、この細胞ではABCA1の発現の増加が見られることから、ABCA5は直接コレステロールの細胞外への輸送に関わっていないが、マクロファージでのコレステロールの調節に関わっていることを明らかとした。このことは、細胞内のコレステロールの調節にABCA1やABCG5/8以外にもABC輸送体が関わっていることを初めて明らかにした結果である。
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