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2011 年度 実績報告書

新しい生理活性脂質放出輸送系の網羅的探索と輸送体構造に基づく普遍的輸送機構の解明

研究課題

研究課題/領域番号 21200071
研究機関大阪大学

研究代表者

西 毅  大阪大学, 産業科学研究所, 准教授 (60403002)

キーワードスフィンゴシン1リン酸 / 輸送体 / 血管内皮細胞 / リンパ球 / 細胞遊走 / 免疫抑制剤 / MFS型
研究概要

我々はオーファン輸送体の中から生理活性脂質の輸送体を探索し、生理機能の解明を進め、並行してその3次元構造を明らかにすることで、両親媒性情報伝達物質輸送体の多様性と普遍性を明らかにし、細胞間情報伝達の研究に新たな領域を確立することを目指している。本年度はゼブラフィッシュにおいてスフィンゴシン1リン酸(S1P)輸送体として同定されたSPNS2のマウス相同遺伝子のノックアウトマウスの解析を進めた。SPNS2はマウスの血管内皮細胞に発現しており、ノックアウトマウスでは血中のS1P濃度が野生型の60%程度まで低下していた。これまで血中のS1P濃度の維持に中心的な働きをしていると考えられていた赤血球には発現しておらず、ノックアウトマウスの赤血球からのS1P放出も野生型と同じであった。しかしながら、SPNS2欠損マウスでは血中へのリンパ球の移行が完全に阻害されていた。これまでの実験結果に基づく仮説ではS1P濃度が低く抑えられている組織とS1Pが高濃度に維持されている血中との間のS1Pの濃度勾配をにリンパ球の細胞膜に発現するS1P受容体が認識して血中へと移行すると考えられていた。しかし、SPNS2ノックアウトマウスでは血中のS1P濃度は60%程度と受容体を活性化するには充分量残っているにもかかわらず、リンパ球の遊走が完全に阻害されたことから、これまで提唱された仮説とは異なり、リンパ球が血中へ移行する出口における局所的なS1Pの供給がリンパ球の血中移行に必須であると考えている。特筆すべきはSPNS2ノックアウトマウスはS1Pの2つある合成酵素ダブルノックアウトマウスやや受容体のノックアウトマウスが胎生致死であるのとは異なり、リンパ球遊走阻害以外の顕著な異常を示さないことである。これは輸送体を標的として副作用の少ない免疫抑制剤を開発できる可能性を示唆している。阻害剤の開発のために今後結晶構造解析などによる輸送体によるS1P輸送機構などの詳細な機巧な解明が必要である。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

本研究では生理活性脂質輸送体を探索し、生理活性脂質の1つであるスフィンゴシン1リン酸の哺乳動物における輸送体としてSPNS2が血管内皮細胞から血中へのS1Pの供給に関わることを初めて明らかにし、SPNS2欠損マウスにおいて免疫細胞の血中への移行がほぼ完全に妨げられることを見いだした。これは哺乳動物で生理的に機能する輸送体を同定した初めての例であり、論文に発表することができた。

今後の研究の推進方策

これまでに、血管内皮細胞におけるスフィンゴシン1リン酸輸送体を明らかにすることができたが、これまでにその機能的な重要性が示されている血球系の輸送体浜田同定できていない。個体における動態を明らかにするためにもそれら輸送体の同定が必要である。
また今後、輸送体による普遍的な輸送機構に関する知見を得るためには、輸送体の構造を明らかにし、基質の認識や輸送経路を明らかにする必要がある。構造解析には結晶構造解析が必要であるが、大量調製まで進めていない、今後は発現系や輸送体のアミノ酸変異などを行うことで、構造解析の行える段階にまでする必要がある。

  • 研究成果

    (9件)

すべて 2013 2012 2011 その他

すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件) 学会発表 (6件) 備考 (1件)

  • [雑誌論文] Mouse SPNS2 functions as a sphingoshine 1-phosphate transporter in vascular endothelial cells2012

    • 著者名/発表者名
      Hisano, Y., Kobayashi, N., Yamaguchi, A., Nishi T.
    • 雑誌名

      PloS ONE

      巻: 7

    • DOI

      10.1371/journal.pone.0038941

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Phosphopeptide-dependent fluorescence labeling of 14-3-3ζ by fusicoccins2012

    • 著者名/発表者名
      Takahashi, M., Kawamura, A., Kato, N., Nishi T., Hamachi, I., Ohkanda, J.
    • 雑誌名

      Angew. Chem. Int. Ed.

      巻: 51 ページ: 509-512

    • DOI

      10.1002/anie.201106995

    • 査読あり
  • [学会発表] 哺乳類におけるスフィンゴシン1リン酸輸送体の同定と生理機能の解析2013

    • 著者名/発表者名
      西毅、久野悠、山口明人
    • 学会等名
      第33回生体膜と薬物の相互作用シンポジウム
    • 発表場所
      岡山大学(岡山市)
    • 年月日
      2013-11-25
  • [学会発表] スフィンゴシン1リン酸輸送体の生理的な役割の解明2012

    • 著者名/発表者名
      西毅、久野悠、山口明人
    • 学会等名
      日本薬学会 第132年会
    • 発表場所
      北海道大学(札幌)(招待講演)
    • 年月日
      2012-03-29
  • [学会発表] 輸送体による情報伝達物質の局所による量的制御が細胞の動きを調節する2011

    • 著者名/発表者名
      西毅、久野悠、山口明人
    • 学会等名
      日本生体エネルギー研究会 第37回討論会
    • 発表場所
      京都産業大学(京都市)
    • 年月日
      2011-12-22
  • [学会発表] Characterization of the ATP- dependent sphingosine 1-phosphate (SIP) transporter in rat erythrocyte2011

    • 著者名/発表者名
      Kobayshi N., Kobayashi N., Adachi H. Yamaguchi A., Nishi T.
    • 学会等名
      The 30^<th> Naito conference on Membrane Dynamies and Lipid Biology [II]
    • 発表場所
      ガトーキングダムサッポロ(札幌市)
    • 年月日
      2011-06-30
  • [学会発表] Physiological roles of sphingosine 1-phosphate transporters2011

    • 著者名/発表者名
      Nishi, T. Hisano, Y. Kobayashi, N. Yamaguchi, A.
    • 学会等名
      Symposium on Bioinspired Materials and Function alities
    • 発表場所
      Hampshire Hotel Plaza (Groningen, Netherland)(招待講演)
    • 年月日
      2011-06-21
  • [学会発表] 哺乳類における新規スフィンゴシン1-リン酸(SIP)輸送体の同定及び解析2011

    • 著者名/発表者名
      久野悠、山口明人、西毅
    • 学会等名
      第58回日本生化学会近畿支部例会
    • 発表場所
      関西医科大学(守口市)
    • 年月日
      2011-05-21
  • [備考] ありません

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公開日: 2014-07-16  

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