本研究では、イネ種子胚乳細胞の蛋白所蔵体オルガネラを構成するプロラミンのプロモーターからなる蛋白発現カセットと貯蔵蛋白抑制カセットを用いることで、イネ種子胚乳細胞に目的の医療用蛋白を特異的に且つ高蓄積させることにより、経口投与された蛋白薬剤を粘膜上皮層や粘膜固有層に送達させ、腸炎や粘膜感染症に対する常温保存可能経口蛋白治療薬を開発することが目的である。 当該プロジェクトで開発された発現ベクターにより、ヒトIL-10遺伝子およびロタウイルスに対するナノ抗体をそれぞれ、0.2%及び1.0%の高発現することに成功した。特にナノ抗体発現米は高発現で、PBS等で簡単に可溶化できることから、試験管内ロタウイルスの増殖抑制効果及び幼若マウス動物モデルで、ロタウイルスナノ抗体発現米粉末からPBS抽出液の経口投与により予防及び治療効果が認められ、このデータをもとに特許申請も行った。しかしIL-10発現米は尿素でも可溶化できず、米蛋白であるプロラミン等とIL-10が分子内部で結合している可能性が考えられた。しかし尿素還元剤存在下では可溶化され、再生精製後、試験管内のヒトマクロファージには作用させることでTNF-αの産生の抑制効果を示した。現在、知られている3種のプロラミンすべてを発現抑制される発現ベクターを用いて、IL-10を発現する方法試みており、残りの1年で可溶化できれば動物モデルでの効果を調べる予定である。
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