研究課題
現在、多くの蛋白医薬の投与形態は注射等による浸襲性のデリバリーシステムにより投与され、非浸襲性、例えば経口投与による蛋白医薬の開発に成功した例はほとんどない。一方で植物をバイオリアクターと考え、組換え蛋白を発現・精製後医療用蛋白として臨床応用する研究も進んでいるが、経口で投与する試みはほとんど行われていない。す〓〓ではないにしろ、ある種の蛋白医薬、例えばインターロイキン10(IL-10)やロタウイルスに対する1本鎖抗体を発現〓分泌する乳酸菌を経口投与することで、クローン病腸炎やロタウイルス感染下痢小児の治療にもちいる研究が進んでいる。しかしこれらの組換え乳酸菌は保存安定性、薬物産生能力の変異等、実際の臨床応用には問題がある。最近我々は、コメの胚乳細胞に存在する蛋白質を貯蔵するオルガネラである蛋白貯蔵体(PB)のうち、特にイネ科特異的である1型蛋白貯蔵体(PBI)にワクチン抗原を発現することにより、ペプシン等の消化酵素に耐性で、且つ長期常温で安定な状態でワクチンを蓄積できることを発見し、コメの蛋白貯蔵体が経口ワクチンのデリバリーシステムとして働くことを見出した。しかしワクチンと違い抗体やIL-10そのものが直接ウイルス増殖や炎症抑制に働くためには、腸管内または局所のウイルス増殖または炎症を起こしている粘膜固有層に安定に薬物を到達させる必要がある。そこで、蛋白貯蔵体PB1表層にできるだけ多くの蛋白医薬を発現させるためにPB1の疎水環境を形成している10kや16Kプロラミン以外の蛋白で、PBIに多く蓄積している蛋白である13Kプロラミン等のコメ貯蔵蛋白の発現を、RNAiを組み込んだT-DNAベクターで抑制し、そのPB形成のエネルギーと余地を、同時にT-DNAベクターに組み込まれた外来の蛋白医薬遺伝子をコードする蛋白の発現・蓄積に向けさせることにより導入された蛋白医薬の発現蓄積を大幅増強させ、且つPBIに特異的に蛋白医薬を発現させたコメを作出させることでコメ型経口蛋白医薬の開発を行う。
1: 当初の計画以上に進展している
経口蛋白医薬としてIL10発現米及びロタウイルス抗体発現米の作出に成功し、特にロタウイルス抗体発現米はコメに大量に可溶化できる状態で発現され、マウスを用いた感染防御実験で、経口でコメ型抗体を投与することで効果を示すことができた。
この後、ここで確立した技術を用いて実用化するために、ヒトに投与可能なHPT選択マーカーフリー米の作出を実施する。また無精製、コメ型経口抗体の規格等の品質についていも研究すると同時に、経口で投与した場合の効果発現の機作を研究するために、経口時での安定性、腸管での抗体の分布等を確認していくことになる。
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