我々の研究グループは低酸素病態に焦点を当て、その超早期診断に向けて、簡便で安価な分子イメージング技術の確立を目指している。我々が提案する低酸素組織イメージング法は、がん、動脈硬化、脳梗塞、心筋梗塞部位が正常組織に比べて低酸素状態にあることに着目し、低酸素環境下でのみ発光するイリジウム錯体(btp)_2Ir(acac)(BTP;分子量712)を生体に投与し、そのリン光(励起波長445-500nm;発光波長600-700nm)を利用してin vivoイメージングシステムで生体の低酸素病態を検出する全く新しいタイプの分子イメージング法である。既に我々は、BTPの発光をヌードマウスに移植した浅部腫瘍で観察していた。 本研究ではマウス皮下の浅部腫瘍だけではなく、深部組織の低酸素状態をより鮮明に観察することを目指して、BTPの励起波長と発光波長の長波長化、発光強度の増加による高感度化した改良体の開発を行っている。平成21年度はBTPの長波長改良体であるBTPHSA(励起波長500-600nm;発光波長700-800nm)を作製し、長波長の励起光、検出光で浅部ヌードマウス移植腫瘍をイメージングした。BTPHSAとBTPの腫瘍探索可能深度を比較したところ、BTPは5-6mm程度なのに対してBTPHSAは12-14mmの深度の腫瘍を探索可能であった。更にBTPHSAでマウス肝臓裏に移植した腫瘍(深度10mm程度)のイメージングに成功した。
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