研究概要 |
Toll-like receptor (TLR) 3, 7, 8, 9はウイルス由来の核酸をエンドソームで認識し、タイプ1インターフェロン産生などの抗ウイルス応答を惹起するが、どのように細胞外の核酸をエンドソームで認識しアダプターを介してシグナルを伝達するか不明である。本研究では、ウイルスdsRNAの合成アナログであるpoly(I:C)のTLR3による認識と、アダプター分子TICAM-1(別名TRIF)を介したIFN-β産生機構を解析し、以下の結果を得た。(1)Poly (I:C)結合活性を有すうヒト細胞株のcell lysateから、poly (I:C)に特異的に結合する分子を、poly U-sepharose、poly (I:C)-sepharoseを用いてアフニティー精製し、質量分析による蛋白同定を行った。siRNAによるノックダウン実験より、poly (I:C)の取り込み受容体と共役して取り込みに関与する新規分子を同定した。(2)種々のTICAM-1変異体を用いた実験より、TBK1との結合に関与し、TICAM-1によるIRF-3活性化に必須のアミノ酸を同定した。更に、構造生物学的、生化学的解析から、TICAM-1のN末側ドメイン(NTD)がTIRドメインのN末側と分子内結合することでTICAM-1は細胞質内で不活性化状態を保っことを明らかにした。これらの結果より、細胞外dsRNAに対する免疫応答は、取り込み段階とアダプター分子の活性化段階の両方で制御されていることが判明した。今後、細胞外dsRNAの取り込み機構を詳しく解析するとともに、poly (I:C)の取り込み受容体の同定、TICAM-1シグナルソームの解析を引き続き行う予定である。
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