研究課題/領域番号 |
21220004
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
稲葉 雅幸 東京大学, 情報理工学(系)研究科, 教授 (50184726)
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研究分担者 |
岡田 慧 東京大学, 情報理工学(系)研究科, 准教授 (70359652)
中西 雄飛 東京大学, 情報理工学(系)研究科, 技術補佐員 (50559458)
浦田 順一 東京大学, 情報理工学(系)研究科, 技術補佐員 (10625479)
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研究期間 (年度) |
2009-05-11 – 2014-03-31
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キーワード | ヒューマノイド / 全身受動性 / 注意誘導性 / 発展的構成法 / ロボットシステム / 筋骨格剛性可変腱駆動 / 感覚行動統合 / ロボット体内自律反応系 |
研究概要 |
本年度は,多様な関節機構を試行可能な全身受動性を備えたモジュール式等身大ヒューマノイドプラットフォームを開発するとともに,異なるハードウェア構成に対しても共通運用可能な統合運動制御基盤ソフトウェアへの拡張及び,その上での注意誘導ソフトウェアの構築を行った. (1)大出力脚プラットフォームの開発:多様な関節自由度及び関節機構を備えた上半身の重量増加に対しても,十分な歩行運動性能を実現するために,負荷の高い股関節・膝関節に関して水冷ダブルモータユニットを搭載した下半身脚プラットフォームを新たに開発した.(2)大出力上半身プラットフォーム開発:体幹/肩関節/頭/、腕関節を十分な関節出力を有し適宜交換可能なモジュールユニットで構成した等身大ヒューマノイド上半身を設計開発し,昨年度開発した脚部と統合し,等身大全身プラットフォームを構築した. (3)衝撃吸収アクティブ肉質柔軟外装:衝撃吸収可能なエアバック機構を有した特殊柔軟外装を構築し等身大プラットフォームに搭載し,転倒時の衝撃による身体損傷を防止可能な全身受動性の実検証を行った. (4)全身受動行動制御:非線形性バネ機構を足首に備えた脚ロボットにおいて,高剛性時の歩行安定性,及び低剛性時の跳躍着地動作の衝撃吸収特性を両立可能であることを示した.(5)運動制御基盤ソフトウェアの統合拡張:数種類の等身大ヒューマノイド固有のデバイス制御層を,共通したオープンな運動制御基盤ソフトウェア(hrpsys-base,ROS)上に拡張することで,異なるロボットプラットフォームにおける検証動作比較解析が容易な環境を構築した.(6)スマートデバイスによる人からの働きかけを用いた注意誘導:スマートデバイスによって,適宜操作者が対話的にロボットタスク行動の制止,修正,行動セマンティックの直接教示が可能なシステムを構築し,注意誘導を介した家事支援行動を実現した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本研究は,知能ロボットカーネルを統合した等身大ヒューマノイドプラットフォーム環境を基盤とし,ヒューマノイドプラットフォームを筋骨格拮抗腱駆動構造により順次改造を加え,道具利用・家具操作などの作業行動への受動性の効果を比較検証し,行動途中に人からの働きかけに気づいて人の指示誘導に従う注意誘導性を備えた行動制御方式を段階的に比較検証することで,身体行動構成法を体系化することが目的である.こうした研究目的を実現する上では,身体ハードウェアプラットフォームの開発とその上で実行される行動ソフトウェアシステムの構築が重要となる. こうした観点から本研究の達成度を評価すると,身体ハードウェアプラットフォームについては,大出力関節駆動筋駆動統合等身大ヒューマノイド,柔軟関節筋骨格ヒューマノイド,全身触覚内包型柔軟外装ヒューマノイドの開発が達成されており,これら柔軟筋駆動・軸駆動,多節体幹機構,柔軟肩関節,柔軟外装機構を適宜交換可能なプラットフォームとして各機構の有無による比較検証可能な状態にあり,当初の開発計画目標を超える成果を上げているといえる.知能ソフトウェアシステムについても,関節駆動型等身大ヒューマノイド上において,1)人観察に基づく働きかけ支援動作,2)全身物体受け渡し動作,3)布展開動作,4)着衣支援,5)車椅子移乗支援,といった具体的な行動支援を実際に実現可能な注意誘導性と全身受動性に基づく行動制御ソフトウェアを構築し研究発表を数多く行ってきており,計画目標を超える多様な行動様式への展開が達成できている状況にある. また,こうした研究課題を達成する過程で生まれた基盤要素技術の中には,1)大出力駆動,2)面状筋柔軟関節機構,3)分散クラウド知能ソフトウェアテスティングサーバ,等に挙げられるような当初想定していない新たな学術展開をもたらしうる研究成果が生まれてきている.
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今後の研究の推進方策 |
これまで構築した柔軟筋駆動・軸駆動統合脚,多節体幹,柔軟関節,柔軟外装を有する全身受動性を備えた全身プラットフォーム上で,動作中であっても人の働きかけに対して安全に割り込み可能な注意誘導ソフトウェアモジュールを発展的に構成する上で比較実証実験を行い,身体受動性に基づく注意誘導全知覚統合行動スキームを総括する. (1)センサフュージョン人認識モジュール構築:柔軟外装内部に搭載した圧力検知センサ,関節トルクセンサ,広視野高視力ビジョンセンサ等のマルチモーダルな知覚モジュールからのセンサ入力を統合し,ロボット動作中においても,人との接触及び周囲環境状況をロバストに認識可能なソフトウェアシステムを構築する.(2)物体移動環境操作タスク行動の段階的実現と受動性検証評価:これまで実現した行動生成認識ソフトウェアをもとに,受動性を利用したタスク行動制御プログラムへの展開を行ない,安定な歩行,歩行時の視野安定度,道具利用時の認識性能・操作性能,全身での物体操作と安定操作性評価のために,運動性能比較検証実験を行う.(3)注意知覚反応行動系の発展的実現と注意誘導性の検証:人の注意誘導による修正・割込み可能な行動システムを,複数認識センサ行動モジュールから成る非同期分散通信型の行動実現ソフトウェア基盤上に構築し,各モジュールの接続構成変化により,人の意図に対して適切な行動遷移がなされたかを,タスク成功評価だけでなく,人側の筋電等の身体測定に基づき評価することで,優位な効果を与える反応機構が何であるかを明確にし,発展的構成法の意義を示す. (4)本研究の成果発信:人間科学,情報学の研究者を交えたワークショップにおいて学際的議論を行い研究を総括するとともに,今年度より日本科学未来館研究棟において研究成果検証及び成果発信のための拠点を形成し,一般来館者へ実演を通じて積極的にアウトリーチ活動を行う.
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