研究課題
脳のシナプスにおいて、マリファナ類似物質(内因性カンナビノイド:eCB)が逆行性伝達物質として働くが、その主体は、ジアシルグリセロールリパーゼα(DGLα)によって作られる2-アラキドノイルグリセロール(2-AG)であると考えられる。平成22年度は、DGLα欠損マウスの解析を中心に、以下の4項目について研究した。1.海馬において、グリア細胞ではなくニューロンに存在するProtease-activated recepbor 1(PAR1)の活性化が2-AGを放出し、シナプス伝達抑圧を起こすことを明らかにした。また、2-AGの分解酵素モノアシルグリセロールリパーゼ(MGL)の欠損マウスでは、持続的に2-AG濃度が上昇しており、シナプス前部のCB1カンナビノイド受容体の機能低下がみられた。2.MGL欠損マウスの小脳において、逆行性抑圧が有意に延長していたことから、2-AG分解系が逆行性シナプス伝達の長さを調節すると考えられた。また、側坐核や扁桃体の逆行性シナプス伝達もDGLα欠損マウスで消失しており、これらの部位でも2-AGが逆行性伝達物質であると結論された。3.DGLα及びCB1の欠損マウスにおいて、麻酔下で膜透過性のCa2+感受性蛍光色素を小脳に注入して多数の細胞に取り込ませ、細胞内Ca2+濃度上昇を指標にして、プルキンエ細胞集団の活動をin vivoで記録した。自発活動に関しては特に異常はみられなかった。4.DGLα欠損マウスでは不安のレベルが亢進し、モルヒネによる薬物依存が起こらないが、海馬依存的学習課題は正常であった。カイニン酸腹腔内投与による海馬てんかん発作が起きやすく、キンドリング刺激によるてんかん焦点形成も起こりやすかった。以上から、2-AGがてんかん発作発生及び焦点形成を抑制していることが明らかになった。
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