研究課題
これまでの研究を継続・発展させ、平成23年度には、以下の結果を得た。(1)海馬培養ニューロンにおいて、新たなDGL阻害剤OMDM-188を用いて一連の電気生理学的解析を行い、2-AGは刺激が加わると、その都度DGLによって合成される可能性を示した。(2)2-AG分解酵素MGLの小脳穎粒細胞特異的欠損マウスの電気生理学的及び形態学的解析から、小脳では、2-AGはシナプス非特異的に分解され、逆行性シナプス伝達の持続時間が調節されていることを示した。(3)DGLα欠損マウスの側坐核中型有棘細胞では興奮性シナプス電流のAMPA受容体成分とNMDA受容体成分(AMPA/NMDA比)が野生型マウスに比べて有意に上昇しており、NMDA受容体機能の低下が示唆された。また、分界条床核ニューロンの興奮性シナプスでも、2-AGが逆行性伝達物質であることを示した。(4)MGL欠損マウスにおいて、多数のプルキンエ細胞の登上線維応答を、細胞内Ca^<2+>濃度上昇を指標にして、in vivoで同時に記録した。内外側方向の活動の同期性が、野生型マウスに比べて低下傾向にあった。(5)自由行動下のDGLα及びMGL欠損マウスの海馬CA1において、シータ波刺激によりシナプス伝達の長期増強を誘発したが、野生型マウスとの間に差は認めなかった。(6)ドーパミンD_2受容体を発現する神経細胞のみでDGLαを欠損するマウスでは、モルヒネに対する感受性が亢進していた。DGLα及びMGL欠損マウスでは、海馬依存性の物体認知課題と匂い弁別課題では異常はなかった。瞬目反射条件付けのLI(latent inhibition)課題は、DGLα欠損マウスでは異常がないが、MGL欠損マウスで障害されていた。(7)大脳基底核依存性学習の評価系として、3レバー・オペラント課題が妥当であることを確認し、マウスへの適応を検討した。
1: 当初の計画以上に進展している
平成23年度の交付申請書に記載した研究計画については、ほぼ達成し、各項目において、ほぼ満足できる結果を得られたと考えている。特に、9.研究実績の概要に記載した(1)、(2)に関しては、実験完了まで2年程度を要すると考えていたものが、既に論文投稿に至っており、当初の計画以上に進展していると判断された。
これまで3年間の計画は順調に達成されており、今後もほぼ当初の計画どおりに推進する予定である。また、一部で、予想以上の進展がみられている他、例えばDGLα欠損マウスの側坐核における興奮性シナプスのグルタミン酸受容体の変化など、当初予想していなかった新事実が得られている。これらは、eCB系の記憶・学習における役割に関して、全く新たなメカニズムの解明につながる可能性があり、今後重点的に推進する予定である。
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