研究課題/領域番号 |
21220006
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
狩野 方伸 東京大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (40185963)
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研究分担者 |
崎村 建司 新潟大学, 脳研究所, 教授 (40162325)
少作 隆子 金沢大学, 保健学系, 教授 (60179025)
岸本 泰司 徳島文理大学, 薬学部, 助教 (90441592)
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研究期間 (年度) |
2009-05-11 – 2014-03-31
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キーワード | 神経科学 / シグナル伝達 / シナプス / 生理学 / 脳・神経 |
研究概要 |
これまでの研究を継続・発展させ、平成24年度には、以下の結果を得た。 (1) 海馬培養ニューロンにおいて、CB1受容体のアンタゴニストと、主要な内因性カンナビノイドである2-アラキドノイルグリセロール(2-AG)合成酵素の阻害剤の存在下で、2-AGを与えると、自発的なシナプス活動が著明に増大した。2-AGから生成されたアラキドン酸またはその下流シグナル分子が、CB1受容体非依存性に神経活動を増大させたと考えられる。 (2) 2-AG合成酵素であるDGLαの欠損マウスにおいて、側坐核のNMDA受容体の各サブユニット(NR1、NR2A、NR2B)の局在をsurface biotinylation法、細胞蛋白質の生化学的な分画法を用いて解析したが、電気生理学的解析で示唆されたようなNR2Bの低下はみられなかった。一方、DGLα欠損マウスにおいて、興奮性シナプスの長期増強が起こりにくい傾向がみられた。 (3) 大脳基底核の運動学習におけるeCB系の役割に関して、3レバーオペラント課題を野生型マウスに適応し、最適な条件設定のための予備的実験を行った。 (4) 分界条床核において、GABA作動性抑制性ニューロンでGFPを発現するマウスを用いて、抑制性ニューロンと興奮性ニューロンを区別して記録し、それぞれへの抑制性シナプス伝達の2-AGによる逆行性伝達抑圧を調べた。シナプス後部の脱分極による逆行性抑圧は両者で同程度にみられたが、グループI代謝型グルタミン酸受容体活性化による逆行性抑圧は、興奮性ニューロンの方が起こりやすかった。また、抑制性シナプスの長期抑圧は、興奮性ニューロンの方が起こりやすかった。また、情動記憶を評価するため、痛み刺激により条件付けされる場所忌避行動を計測した。 (5)DGLαノックアウトマウスにおいて、非連合学習課題である匂い馴化は、野生型マウスと比較して有意に促進していた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
平成24年度の交付申請書に記載した研究計画については、ほぼ達成し、各項目において、ほぼ満足できる結果を得られたと考えている。一部に、negativeな結果しか得られなかったものもあるが、CB1受容体非依存的な新たな内因性カンナビノイドの効果が見つかるなど、当初の計画以上に進展していると判断された。
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今後の研究の推進方策 |
これまで4年間の計画は順調に達成されており、平成25年度の計画もほぼ当初の計画どおりに推進すると見込まれる。平成24年の研究進捗評価では、「A+:当初目標を超える研究の進展があり、期待以上の成果が見込まれる」という、最高の評価を得ている。平成25年度は、今後のさらなる展開を見据え、2-AGシグナルの欠損による興奮性シナプスのグルタミン酸受容体の二次的変化や、CB1受容体非依存的な新たな内因性カンナビノイドの効果などについて、研究を進めていく予定である。
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