研究課題
細胞や組織が力学的環境に由来するメカニカルストレスを感知して応答することは、その機能や生存にとって極めて重要な役割を果たしている。しかし、そうした力学応答の仕組みはまだ十分解明されていない。我々は血管細胞が血流に起因する流れ剪断応力(shear stress)を感知して細胞応答を起こす分子機構を解明する研究を行ってきた。平成21年度はshear stressが血管内皮細胞の細胞膜の流動性と膜リン脂質の相転移に与える影響について解析を加えた。その結果、shear stressが作用すると即座に膜の流動性が上昇し、膜リン脂質の結晶相からゲル相への転移が促進されることが分かった。また、我々のこれまでの検討でshear stressのセンシング機構の1つとしてカルシウム・シグナリングが働いていることを示してきた。すなわちshear stressが内皮細胞に作用するとATPが放出され、それがATP受容体であるP2X4チャネルを活性化することで細胞外カルシウムが流入し、結果的に細胞内カルシウム濃度が上昇することで細胞内へ情報が伝達される。今回、shear stressによるATP放出反応を高感度で実時間イメージングできるシステムを開発した。これは遺伝子工学的に作製したヒオチン化ルシフェラーゼ蛋白を細胞膜に結合させ、細胞から放出されたATPとルシフェリン・ルシフェラーゼ反応を起こすことで発生するフォトンを冷却CCDカメラで捉えるものである。その結果、ATPがshear stressに反応して内皮細胞の局所から放出されること、そこは細胞膜フラスコ状陥凹構造物であるカベオラの分布する細胞辺縁であることが示された。
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