研究課題
・ドームふじ氷床コアの分析を継続した。・氷床コア含有気体の窒素と酸素の量比の2000年間隔の深部データが完成したので、これを用いてミランコビッチ・サイクルに基づく新たな年代決定を行っている。・ドームふじ深層コアの海塩性ナトリウムイオン(海塩エアロゾルの指標)、非海塩性カルシウムイオン(ダストの指標)、非海塩性硫酸イオン(海洋生物活動の指標)のフラックス変動の復元を行った。非海塩性硫酸イオンは、オービタルスケールの変動を示すものの、海塩性ナトリウムや非海塩性カルシウムとは異なり、気温と単純な逆相関の関係を示していなかった。氷期の寒冷期に、陸域のダスト起源の非海塩性硫酸イオンが増えた可能性が示唆された。・氷床コアから気温変動復元を高精度化するために、同位体モデルを用いた気温復元を行った。過去の研究結果とは異なり、水蒸気起源水温変動が有意に大きい推定値を得た。・氷期・間氷期サイクルとエアロゾル変動の対応に着目して、エアロゾルの濃度だけでなく組成という新しい古環境プロキシーに着目した解析をした。イオン濃度から硫酸塩濃度を復元し、その濃度が氷期間氷期スケールの気温変動と負の相関関係があることを明らかにした。この負の相関は硫酸塩が負の放射強制力として氷期間氷期スケールの気温変動に作用していることを示唆する。・極域雪氷試料のストロンチウムとネオジウムの同位体比の測定を元素の単離法の検討と磁場型多重検出型ICP-MSで可能にした。さらに四重極型(Q)ICP-MSの最適化により、元素濃度測定のサブpgオーダーの分析を可能にした。氷床表面の積雪試料の分析から、大陸起源粒子状物質の起源や希土類元素存在度パターンに関する情報が得られた。・トラジェクトリモデル及び客観解析気象データを用いた南極氷床への大気輸送起源の分布を、現在気候場における年平均および季節変化に着目し、沿岸域と内陸部での大気輸送の違いや各コア掘削点での特徴を得た。
2: おおむね順調に進展している
研究目的の一つは、ドームふじ氷床コアの解析から正確な年代軸を持う地球環境変動を明らかにし、地球環境史研究の基準となる気候・環境変動記録を提供することである。氷床コアの分析については、分析装置の動作不良等により、計画どおりには進んでいないが、今度の努力により予定どおりの成果が見込まれる。また過去72万年間の気候・環境変動を論じた論文発表が平成24年度前半には出版できる見通しである。これに続く論文発表がすでに複数準備されている。
研究の進捗状況は、測定機器の故障などがあり、年次計画よりも遅れ気味であるが、大きな問題点は生じていない。研究目的の一つである氷床コアの年代を高精度に決定し、過去72万年間の地球規模気候・環境変動の基準を作成する。大規模な地球環境変動について、時間スケールに特徴つけて研究を進める。また、当初の研究計画では強調していなかったが、気候・環境要素が積雪に取り込まれて氷床に保存される過程や現在の物質循環に関しても研究を進める。これらは、氷床コアから得られた分析データをから過去の気候・環境変動復元に関して不可欠な研究である。
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