研究課題
・ドームふじ氷床コアの化学分析を継続した。第2期ドームふじ氷床深層コアの2400mから3035mまでの10cm間隔連続サンプルの分析(水同位体、イオン、ダスト)がほぼ終了した。一次データのチェックを開始し、必要に応じて再測定を始めた。さらに氷床コア含有気体の窒素と酸素の量比の2000年間隔の深部データが完成したので、これに氷河流動モデルを用いてミランコビッチ・サイクルに基づく新たな年代決定を行っている。・過去70万年間の千年スケール気候変動の頻度の研究として、DFコアの同位体データを解析し、古気候シミュレーション結果とともに論文化を進めた。さらに最終氷期における南極の温暖化イベント(AIM)の分析と研究について、AIM3~8を7~10年という高時間分解能での化学分析を継続した。AIM3~4については、解析結果を学会で発表し、現在論文を準備中。・アイスコアに保存されている水溶性エアロゾル粒子を観察する手法を世界に先駆けて開発し、水溶性エアロゾルのひとつである硫酸塩エアロゾル粒子に着目し,過去30万年間のフラックスを復元することに成功した。大気中の硫酸塩エアロゾルが氷期-間氷期サイクルの気温変動を増幅していたことを初めて解明し、将来の地球温暖化予測において,最も大きな不確定要因になっているエアロゾルの影響評価を,高精度でモデルに取り込むことができるようになると期待される。この研究成果をNatureにて発表した。・ドームふじ氷床コアを含む3つの深層コアの水の水素・酸素安定同位体比を同位体モデルによって解析した。過去36万年間の堆積地点の気温と水蒸気起源の温度を定量的に復元した。また氷床コアに含まれる水溶性アルミニウムエアロゾルの存在形態を明らかにした。
2: おおむね順調に進展している
研究目的の一つは、ドームふじ氷床コアの解析から正確な年代軸を持つ地球環境変動を明らかにし、地球環境史研究の基準となる気候・環境変動記録を提供することである。氷床コアの深部である2400mから3035mについては10cm間隔の化学分析が終了し、データチェックの段階に入った。精密年代決定に関しても順調に研究を進めている。過去30万年間のコア研究成果としてNatureに「氷期-間氷期の気温変動に硫酸塩エアロゾルが寄与している」という主旨を論文発表した。
研究の進捗状況は、測定機器の故障や分析補助者不足などがあり、年次計画よりも遅れ気味であるが、大きな問題点は生じていない。最終年度であり、氷床コアの年代を高精度に決定し、過去72万年間の地球規模気候・環境変動の基準を作成することを最大に推進する。中間評価で指摘された数100年タイムスケールの気候変動や、気候変動メカニズムに関する研究をさらに進める。当初の研究計画では強調していなかったが、氷床コアから得られた分析データから過去の気候・環境変動復元に関して不可欠な研究になる、気候・環境要素が積雪に取り込まれて氷床に保存される過程や現在の物質循環に関しても研究を継続する。本研究課題に関連した研究集会を開催し、研究成果をとりまとめる。
すべて 2013 2012 その他
すべて 雑誌論文 (13件) (うち査読あり 13件) 学会発表 (20件) (うち招待講演 3件) 備考 (1件)
Environ. Res. Lett.
巻: 8 ページ: -
doi: 10.1088/1748-9326/8/1/014032
Journal Atmospheric and Climate Sciences
巻: 3 ページ: 186-192
Environmental Microbiology Reports
巻: 5 ページ: 127-134
Nature
巻: 490 ページ: 81-84
10.1038/nature11359
Climate of the Past
巻: 8 ページ: 1109-1125
The Cryosphere
巻: 6 ページ: 1203-1219
doi:10.5194/tc-6-1203-2012
Journal of Geophysical Research
巻: 117 ページ: -
DOI: 10.1029/2012JF002440
南極資料
巻: 56 ページ: 57-67
Science of the Total Environment
巻: 433 ページ: 1109-1125
巻: 493 ページ: 489-494
doi:10.1038/nature11789
Clim. Past Discuss.
巻: 8 ページ: 4817-4883
巻: 8 ページ: 5455-5492
巻: 8 ページ: 5389-5427
http://polaris.nipr.ac.jp/~icc/NC/htdocs/