研究課題/領域番号 |
21221003
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
三谷 啓志 東京大学, 新領域創成科学研究科, 教授 (70181922)
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研究分担者 |
野田 朝男 公益財団法人放射線影響研究所, 遺伝学部, 副部長 (40294227)
藤原 智子(石川智子) 大阪大学, 医学系研究科, 助教 (70402922)
高野 吉郎 東京医科歯科大学, 医歯(薬)学総合研究科, 教授 (90126425)
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研究期間 (年度) |
2009-05-11 – 2014-03-31
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キーワード | 放射線 / 突然変異 / メダカ / マウス / DNA修復 / 細胞死 |
研究概要 |
1) 放射線誘発突然変異細胞を可視化測定するモデルマウス/メダカの作製 マウスX染色体上のHPRT遺伝子をテスターに選定した突然変異(reversion)が生じると細胞が光るマウスモデル系を作製した。HPRTdupGFPノックインマウスは、HPRT遺伝子座における復帰突然変異により体細胞および生殖細胞が生きたまま緑色に光る。X線(3Gy)照射し突然変異細胞の測定が可能となった。DNA修復タンパク質とGFP融合タンパク質の発現コンストラクトを導入し、メダカ細胞でも哺乳類と同様に修復タンパク質の挙動を検出できることを確認した。 2) 個体におけるDNA修復タンパク質の可視化 DNA 修復タンパク質(NBS1)の挙動を蛍光タンパク質により個体内でモニターするベクターを開発してメダカに導入して胚細胞での応答を検出する方法を開発した。 3) メダカ突然変異体組織細胞の放射線応答性解析 p53突然変異体メダカの精巣組織内では、精原幹細胞が位置する場所に、大きな核と核小体が鮮明な卵様細胞が存在していた。γ線照射を行うと、これらの細胞数が一過的に急激に増加し、巨大化する。この細胞は、卵母細胞に特異的に発現する遺伝子群を発現していた。p53の機能欠損が生殖細胞分化の異常を顕在化させるという報告は哺乳類でもあるが、魚類では放射線が雄性生殖細胞の性転換を増加させ、p53依存性、非依存性の2種類のアポトーシス経路で排除されるという報告はこれまで見当たらず、p53遺伝子機能の新しい知見となった。 4) 放射線応答のモデル組織としてのメダカ咽頭歯 細胞増殖とターンオーバーが極めて盛んな組織であるメダカの咽頭歯を対象に、これまで報告のない放射線の増殖分化影響を組織レベルで観察した。系統間で咽頭歯形成に差があることが分かり、系統選抜の再検討を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
メダカ個体を用いたマウスと同等の前進性突然変異検出系の作製が達成されていないが、その他の部分は予定通りにすすんでいる。メダカp53変異体における放射線が誘発する精巣卵と咽頭歯原性上皮の放射線損傷については、予想されていなかった興味深い現象が発見されている。組織特異的放射線応答遺伝子をトランスクリプトーム解析により見つける方法を開発した、これを応用して、精巣についても解析を開始する予定で有り、これにより放射線が誘発する精巣卵の生成機構解明への手がかりを得ることが期待される。
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今後の研究の推進方策 |
① 突然変異の可視化メダカ系統の作製 マウスのHPRTdupGFP検出系に相当する復帰型突然変異を検出するコンストラクトを作製し、培養細胞で検証し、メダカ胚に導入する。マウスと比較可能な程度の感度が得られるかは不確定であるため、複数の系を比較する予定である。② 突然変異の可視化マウス系統の組織における突然変異細胞出現率の定量法の開発 HPRTdupGFP系統マウスに放射線を照射して得られる突然変異細胞出現率の測定方法を組織ごとに検討する。③ DSB修復に関連する新規突然変異系統の作製し、組織放射線応答をp53系統と比較する。現在スクリーニングを行っているDNAPK、p53の2重突然変異体を系統として樹立する。これらと既存の突然変異体で各組織の放射線応答をp53変異体と比較してそれら遺伝子の寄与度を調べる。咽頭歯については、より詳細に照射条件を検討するとともに組織損傷の回復過を明らかにする。精巣については、配偶子形成に関わる内分泌因子、減数分裂関連因子について遺伝子発現誘導を中心に解析を行い、放射線がどのようにして細胞レベルでの性転換を誘発するのかについて検討する。
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