研究課題/領域番号 |
21221008
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
塩田 邦郎 東京大学, 大学院・農学生命科学研究科, 教授 (80196352)
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研究分担者 |
八木 慎太郎 東京大学, 大学院・農学生命科学研究科, 特任教授 (10420225)
種村 健太郎 東北大学, 大学院・農学研究科・動物生殖科学分野, 准教授 (20332322)
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キーワード | 性差 / エピゲノム / ホルモン依存 / 組織依存 / エピジェネティクス / 性差DNAメチル化領域 / ヒストンH1 / 子宮筋腫 |
研究概要 |
前年度までのゲノム全域のDNAメチル化解析結果を基とし、性差DNAメチル化可変領域(S-DMRs)について以下の項目について重点的に解析を進めた。性ホルモン依存性雌雄T-DMRの同定とDNAメチル化による雌雄遺伝子発現制御:22年度までに同定した、性ホルモン依存的S-DMRsの中には、雄で脱メチル化されるもののみならず、雌で脱メチル化を示すものが存在することを明らかにした。S-DMRsは発現においても性差を示す遺伝子の転写開始点近傍にあるが、興味あることに、これらは成長時期依存的に変化する。このことから、成長依存的脱メチル化パターンへのGHの関与を仮説として検討を加えた。ゲノムワイドDNAメチル化解析:雌雄のDNAメチル化可変領域の組織特異性を確認するため、新たに理研BRCより入手した雌雄のES細胞のD-REAM解析を行った。多くの点でこれまでの結果を裏付けるものであったがlX染色体のメチル化状況に関して、分化状況を含め検討すべき項目があることが分かった。一方、肝臓において、メチル化率で認められる雌雄の性差が遺伝子発現の性差とは関連していない、常染色体上のS-DMRsを同定した。これらのS-DMRsが脳・ESで雌雄差を認めないことから肝臓特異的S-DMRsであることを確認した。卵特有ヒストンH1(H1foo)のDNAメチル化プロフィール形成への関与:これまでに卵子特有のヒストンH1であるH1fooのDNAメチル化プロフィール形成への関与を見いだしていたが、この領域でのDNAメチル化変化がH1fooの標的部位への特異的結合とヌクレオソーム位置の変化の誘発を伴うものであり、結果としてES細胞の分化抑制を起こすことを見いだした(論文投稿中)。脳機能の性差とエピジェネティクス:発達過程での認知機能について、特に海馬依存性が高いと考えられる空間連想記憶能について、4週齢時で雌雄差を認めた。この時期に対応する海馬神経細胞で、ヒストン修飾状況の性差が示唆されたため、引き続き検討を重ねる。2010年度に核ゲノムコードミトコンドリアタンパクをコードする遺伝子領域にはT-DMRsがあり、ミトコンドリア機能はエピジェネティクス制御下にあることを明らかにしているが、その下で性差を示す領域が見つかった。また、子宮筋腫ではX染色体T-DMRsのエピジェネティクス異常があることが判明した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究開始時に予想したように、ホルモン依存・非依存の両方について、多数のS-DMRsが発見された。ホルモン非依存では卵特異ヒストンH1fooの標的遺伝子領域が、H1fooにより脱メチル化されS-DMRsとなることが明らかになった。他のヒストンサブタイプと異なり、H1fooはクロマチン構造を緩める方向に作用していることを示しており、基礎的には予想以上に面白い展開となってきた。また、X染色体のエピジェネティクス異常が子宮筋腫の病因である可能性が示され、おおむね順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
ES細胞間でのT-DMRsのDNAメチル化の差異が、性に依存した差であるのか、細胞間の差であるのかを決定することが困難とな場合が多かった。一方、性差は加齢と共に広がる傾向にあり、解析個体の週齢を加味した計画が必要になってきた。
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