研究課題/領域番号 |
21221008
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
塩田 邦郎 東京大学, 農学生命科学研究科, 教授 (80196352)
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研究分担者 |
山内 啓太郎 東京大学, 農学生命科学研究科, 准教授 (70272440)
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研究期間 (年度) |
2009-05-11 – 2014-03-31
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キーワード | ゲノム / エピゲノム / ゲノムネットワーク / T-DMR / 次世代シークエンス |
研究概要 |
1)性染色体と常染色体の性差ダイナミズム~エピゲノムデータベースの構築~ DNAメチル化解析法COBRAによって得られたメチル化の実測値を基に、D-REAM法のバイオインフォマティクス解析ワークフローの改良を行い、偽陽性率を軽減させることに成功し、新たに複数箇所のS-DMRの同定に成功した。その中には、O-GlcNAc基をタンパク質に付加するO-GlcNAc転移酵素Ogtが含まれており、雌胎盤では雄に比べてOgt遺伝子座が低メチル化状態であった。また、多くのS-DMRは生後4週齢目から形成されること、S-DMRの中には成長ホルモン依存・非依存のものが存在することが明らかとなった (revise中; Takasugi M et. al., Mechanisms of Ageing and Development, 2013)。より詳細なエピゲノムデータベースを目指しD-REAM法で解析可能な領域以外のS-DMRの同定を目指し次世代シークエンサーを用いたゲノムワイドDNAメチル化解析法DREAM-seqとHELP-taggingによるデータの取得を行った。 2)雌雄エピゲノム形成に関わるヒストンの機能解析 雌生殖細胞特異的リンカーヒストンH1fooは体細胞型H1とは逆の機能であるクロマチンの弛緩を促す機能を持つことを前年度までに明らかにし、24年度に論文として発表した (Hayakawa K et. al., Epigenetics, 2012)。さらに、H1fooがエピゲノム形成に関わる分子メカニズムを明らかにすることを目的とした次世代シークエンサーを用いたChIP-seq法を行うために、H1foo特異的抗体の作製し、クロマチン免疫沈降に問題なく使用できることが確認できた。それを利用し、ChIP-seqのデータ取得も完了した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
24年度の申請時に掲げた、DNAマイクロアレイから次世代シークエンサーベースへの切り替えを行うことができた。加えて、これまでに同定してきたS-DMRが成長ホルモン・性ホルモン依存的か否かも明らかにすることもできた。この研究結果から、ホルモン非依存的なS-DMRは何によってそのメチル化状態が形成・維持されているか、という新たな疑問が生じてきた。この疑問を解決するための研究はすでに始めており、現在、性依存的な遺伝子発現およびDNAメチル化状態を示すエピジェネティクス因子H1fooと24年度に新たに発見したOgtがホルモン非依存S-DMRに関与していると考えている。なぜなら、これらの因子の発現やDNAメチル化状態はいずれのホルモンにも依存していないからである。また、これまでの研究成果は論文・学会発表の形で世界中に配信することも24年度には精力的に行ってきた。 以上より、おおむね順調に進展していると評価した。
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今後の研究の推進方策 |
平成24年度までに解析・検討してきたことを基に、主に以下の項目について研究を行う。 (計画1) 次世代シークエンサーを用いた性差DNAメチル化可変領域(S-DMR)の同定。 前年度に次世代シークエンス用解析法HELP-taggingおよびDREAM-seqのサンプル調整およびデータの取得は完了している。このデータを基に性差を示すDNAメチル化可変領域(S-DMR)を決定する。対象とする組織はこれまで同様に成体マウス肝臓、骨格筋、大脳、およびマウスES細胞である。これらの解析は、膨大な量のデータを対象とはするが、24年度の追加配分で購入した解析ソフトを利用することで、25年度内での達成が可能である。 (計画2) 性ホルモン依存・非依存S-DMRの同定。 計画1の解析より得られたS-DMRが性ステロイドホルモン依存または非依存的かを明らかにする。これまでに用いてきた性腺除去雄および雌マウスを利用し、COBRA法及びバイサルファイトシークエンス法によりDNAメチル化状態を調べる。 (計画3) 性依存的エピジェネティック因子リンカーヒストンH1fooおよびO-GlcNAc転移酵素(Ogt)のゲノム上標的領域の決定。 H1fooは性腺発生前に卵・受精卵の段階でDNAメチル化状態と発現に性差を示すことがこれまでに明らかになっている。Ogtの発現も胎盤に加え分化栄養膜幹細胞でも発現に性差を示すことが明らかになった。本年度は、H1fooとOgtのエピジェネティクス解析を行う。性依存的に発現が異なるH1fooとOgtのゲノム上の標的も視野に入れ、性差のエピジェネティクスカスケード制御の概念を確立する。(計画1-3)の研究内容はすべて25年度内に学術論文として世界に広く発信する。
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