研究課題/領域番号 |
21221009
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研究機関 | 神奈川大学 |
研究代表者 |
上村 大輔 神奈川大学, 理学部, 教授 (00022731)
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研究分担者 |
大野 修 慶應義塾大学, 理工学部, 助教 (20436992)
末永 聖武 慶應義塾大学, 理工学部, 准教授 (60273215)
有本 博一 東北大学, 生命科学研究科, 教授 (60262789)
宮本 憲二 慶應義塾大学, 理工学部, 准教授 (60360111)
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キーワード | 巨大炭素鎖有機分子 / 生物活性 / 海洋生物共生鞭毛藻 / 生物学的存在意義 / 分子量2,169 / 生体内動態 / メタゲノム |
研究概要 |
巨大炭素鎖有機分子の代表的な存在であるハリコンドリンBの合成誘導体、エリブリンが乳がんの末期患者のための治療薬として、全世界的に認可、使用されるに至った。テレビ番組として放映され、社会的にも大きなインパクトを与えた。 巨大炭素鎖有機分子の創製に力を注ぎ、共生渦鞭毛藻の培養から、新たに分子駄2,169のアンジゲノールAをはじめ、典型的な巨大炭素有機分子を得た。この構造決定は、独自に開発したGrubbs触媒を利用したallyl v-o-dio1の選択的酸化分解法を駆使して遠成することが出来た。A、B、Cが存在する。生物活性としては、抗肥満薬リードとして期待できる脂肪蓄積阻書活性が確認できた。 分子量5,088の分子については、分離法の改良に成功して、イオン交換樹脂による分離をうまく適用でき、すでに推定している部分構造とオレフィンメタセシス条件での独自のallyIvio-diol分解法を駆使して、現在構造解析中である。分子量8,245の分子についても分離に成功しており、今後構造解析に入る。 サンゴの幼生の変態、着生を誘導する新規マクロライド、ルミナオライドの立体化学を推定することが出来た。こういった分子の立体構造を考える上でROESY法を使ったNOE解析と、JBCA法の利用による立体配座解析が、極めて有効であることが分かった。以上のように、巨大炭素鎖有機分子に関する研究は順調に進捗し、目的とする新しい化学物資の世界、「巨大炭素鎖分子の化学」が創成されつつあると認識できるようになった。これらの内容は、IUPACの天然物化学国際会議の基調講演で紹介した。 一方、クロイソカイメン由来の難培養性バクテリアのフォスミドライブラリを構築した。15万クローンあるので物質生産を検討したところ、新規物質のビスインドール体が発見できた。これを継続進展させれば、さらに大きな生成物が期待できる。加えて、この方法はバック法ライブラリーへと展開でき、さらに大きな分子の構築が可能である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
予想以上の成果が出ていると評価できるが、若干の生物的な研究課題の進展が遅れており、上記の自己評価とした。これは、1)残された時間の有効な活用と重点的な研究集約、2)新たな共同研究者(分担者としてではない)の参入、によって解決できる内容であると理解している。
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今後の研究の推進方策 |
分子量8,000以上巨大炭素鎖分子については、未知を切り拓きつつ前進する必要があり苦労を強いられているが、培養法の圧倒的な進展と巨大炭素鎖有機分子の物質量確保を遂行して解決する。ポリクロナール抗体を用いる分子局在解明に当っては、共焦点顕微鏡での分子直接観察法の開拓を検討する。分子の形のためにはSAXS法を適用する予定である。また、合成遺伝子取得では共生バクテリアの除去が重要と考える。さらに、メタゲノム研究では、対応するバックライブラリーの構築に全力を尽くす。 これらの問題を解決し、「巨大炭素鎖有機分子の化学」の完成へ向けて進める。
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