研究課題/領域番号 |
21222001
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
羽田 正 東京大学, 東洋文化研究所, 教授 (40183090)
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研究分担者 |
岩井 茂樹 京都大学, 人文科学研究所, 教授 (40167276)
島田 竜登 東京大学, 人文社会系研究科, 准教授 (80435106)
杉浦 未樹 東京国際大学, 経済学部, 准教授 (30438783)
松井 洋子 東京大学, 史料編さん所, 教授 (00181686)
松方 冬子 東京大学, 史料編さん所, 准教授 (80251479)
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研究期間 (年度) |
2009-05-11 – 2014-03-31
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キーワード | 世界史 / ユーラシア / グローバル・ヒストリー / 比較 / 異文化交流 |
研究概要 |
24年度は、以下の通り、総計20回の研究集会を開催した。このうち主として国内の研究者が集まる研究集会は、研究方針のマニフェストである研究代表者新著の書評会と今後の方針確認(4月15日)、最終年度の出版に向けた会議(4月21日)、研究会については「支配」(6月30日)、「価値」(7月1日)、出版予定の書籍の内容発表をする「新しい世界史に向かって」(7月21日と9月15日)、大阪大学でグローバル・ヒストリー研究に携わる若手研究者を招へいしておこなった「若手研究者交流会」(7月22日、23日)、「裁判からみた『新しい世界史』の試み」(10月8日)、「女性」(10月27日、28日)、「商館」(1月13日)、2度目の「支配」(1月14日)、大阪大学にて開催した第二回「若手研究者交流会」(2月10日、11日)の計12回である。国際研究集会は、ソウルの第2回アジア世界史学会国際会議で「美術史」と「科学史」のパネルを企画して発表(4月28日)、地中海史の講演(7月21日)、ドイツベルリン自由大学とのワークショップ(10月6日)、「海賊」研究会(10月7日)、「砂糖」「奴隷」についての会議(11月17-19日)、東アジア海域の交易共催シンポ(1月12日)、カナダマギル大学インド洋世界センターとの共同ワークショップ(2月17-19日)、上海の復旦大学文史研究院で"New Trends of Humanistic Studies"と題した研究交流会(3月13-15日)の計8回で、その他ゲント国際会議に若手研究者を派遣(6月21日-23日)するなどした。以上の活動をとおし、昨年度に整備したプラットフォームで国内外の研究者が集い、世界レベルで新しい世界史を議論することができた。具体的に出版についての会議と発表をおこなうことにより、最終年度につながる研究成果の公開に向けて大きく前進することができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
これまでの多彩な研究活動と研究成果の公表により、様々な波及効果が出ている。例えば、研究代表者の著書『新しい世界史へ』(岩波新書)は、歴史研究者や高校で歴史教育に携わっている教員のみならず、一般市民にも大きなインパクトを与えた。大手新聞や雑誌に書評や関連記事が掲載され、高校教員の研究会から講演要請から数多く寄せられている。また、反響は海外にもおよび、目下、この本の中国語訳刊行の準備が進んでいる。 外国の研究者とも積極的に意見交換の機会を設け、これまでに上海、リヨン(フランス)、モントリオール(カナダ)と東京で国際研究集会を開き、諸外国の研究者と世界史の解釈と叙述の方法についての議論を行った。次年度にはナポリ東洋大学(イタリア)、ベルリン自由大学(ドイツ)、プリンストン大学(アメリカ)で、世界史の理解と叙述の仕方についての国際研究集会を開催することが決まっている。また、カナダのマギル大学インド洋世界研究所との間では、第2回の共同研究集会が予定されている。本共同研究は、様々なバックグランドをもつ国内外の研究者が集まり、新しい世界史について考えるためのプラットフォームとしての役割を相当程度果たすようになってきている。 和文刊行物としてのモノグラフ・シリーズは、執筆者の計画を全員で議論する段階を終え、各自が執筆に取り掛かっている。そのほかに、新しい世界史の理念を分かりやすく示す「絵で見る輪切りの世界史」や、アメリカの大学生向け世界史教科書の翻訳など、新しい出版計画がまとまりつつある。 さらに、和文、英文のホームページでは、研究活動の広報の充実を図った。上記のような国外との交流や活動報告を地図上に落とし込んで「世界地図でみる活動報告」を作成、公開するに至った。
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今後の研究の推進方策 |
最終年度の平成25年度には、前年度以前から開催されてきた研究会の成果取りまとめの作業を進める。モノグラフ・シリーズの刊行を開始し、論文集やウェブサイトなどによる研究成果の発表と合わせて、新しい世界史の観点に立って記された相当数の研究業績を世に出す。また、国内外の研究機関において新しい世界史の理念や分析・叙述方法、教育などについての議論を展開し、研究分担者や連携研究者による一般向けの講演会やセミナーを積極的に開催する。これら一連の活動を通じて、社会一般に新しい世界史認識が普及するように努力する。 さらに、国外においてもこの共同研究の成果への関心が高まるように、外国語での論文集出版、ウェブサイトでの報告、外国人研究者を招いての研究会や外国での国際会議開催などを実施する。また、今後の海外との共同研究を、機関をベースとして行うための交渉を開始する。 現行の世界史認識について議論し、地球市民という帰属意識を生み出すような新しい世界史の解釈と叙述を作り出すという本共同研究の目的は、すでに相当程度実現しているが、最終年にも活動を続けることによって、十分に達成可能だと考える。いわゆる「グローバル・ヒストリー」とは異なる部分もある「新しい世界史」という考え方を、諸外国の研究者が簡単に理解し、全面的に受け入れているわけではない。しかし、議論を重ねることで、その考え方に関心を示す研究者が次第に増えてきていることは確かである。残りの研究期間を通じて、できるだけ多くの外国人研究者と話し合う機会を作ることで、この共同研究を世界的にみてもインパクトのあるものに昇華させることができると考えている。
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