研究課題/領域番号 |
21222003
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研究機関 | 北海道教育大学 |
研究代表者 |
氷見山 幸夫 北海道教育大学, 教育学部, 教授 (20142771)
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研究分担者 |
春山 成子 三重大学, 生物資源学研究科, 教授 (10267461)
木本 浩一 広島女学院大学, 生活科学部, 教授 (20294605)
土居 晴洋 大分大学, 教育福祉科学部, 教授 (40197992)
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研究期間 (年度) |
2009-05-11 – 2014-03-31
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キーワード | 土地利用 / GLP / 地球環境問題 / SLUAS / アジア / 持続可能性 / 東日本大震災 / LUCC |
研究概要 |
地球情報基盤の整備、分野横断的研究の推進、政策の推進と教育の充実を緊密に連動させた総合的土地利用研究をインド、中国、タイ、日本について実施した。 1.土地利用変化現地合同調査:インドビハール州とハリヤナ州、中国四川省と雲南省で現地の研究機関と共同で現地調査を実施した。また東日本大震災被災地と紀伊半島2011年大水害地域において合同調査を実施した。東日本被災地調査は、小規模のものを含めると、これまで13回におよぶ。 2.土地利用変化情報ベースの開発と分析:ビハール州、雲南省、タイ中部、愛知県、千葉県について、20世紀後半以降の土地利用変化の実態とメカニズムを明らかにする上で役立つ土地利用変化情報ベースの開発と分析を実施した。特にMapstor等の市販地図、衛星画像、現地調査によるGPS情報付写真などを用いて広域の土地利用現況と変化を地図化し考察した。 3.研究集会:過年度同様日本地球惑星科学連合大会IHDP国際セッションとGLP国際セッションを日本学術会議と共催で実施し、研究成果を発表した。恒例のSLUAS Asahikawa Workshopも14の論文が発表され盛会であった。またIGUケルン国際地理学会議でも成果を発表した。 4.成果の刊行・アウトリーチ:SLUAS Science Report Vol.IIIとVol.IVを刊行した。他にも持続可能な土地利用に向けた執筆活動を精力的に行い、多くの国内外の雑誌等で公刊した。特に「学術の動向」に掲載された「東日本大震災を踏まえた安全安心で持続可能な国土利用への課題」(氷見山著)、および雑誌「地球環境」の論文「2011年東北地方太平洋沖地震津波と土地利用」(氷見山著)は本プロジェクトの東日本大震災への取り組みを示すものとして重要である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
SLUAS Science Report “Towards Sustainable Land Use in Asia(III), (IV)を刊行した。これらにはアジア各地の土地利用変化とそれに関する地図、情報、研究成果が網羅されている。他にも持続可能な土地利用に向けた執筆を鋭意行い、雑誌「地球環境」をはじめ多くの雑誌等で発表した。また国際地理学連合(IGU)、日本学術会議、日本地球惑星科学連合等と連携してアジア各地や国内で多くのシンポジウム等を主催・共催・後援し、プロジェクトの研究成果の発信と普及および広範な研究者との交流及びネットワーク化を実現した。本研究の代表者は昨年度1年間に日本学術会議が編集する雑誌「学術の動向」に3編の論文を発表したが、それらはいずれも本研究の成果に強く裏付けられたものであり、研究成果の発表にとどまらず、より広い観点から地球環境研究の方向性を示したものである。日本学術会議は2013年4月現在、会長主導の下ICSU/ISSCの地球環境研究計画 Future Earthに総力をあげて取組もうとしているが、本研究で得られた知見はその議論の中で重要な役割を果たしている。
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今後の研究の推進方策 |
アジアの持続可能な土地利用の形成に向けて、今後も土地利用・災害に関る地球情報基盤の整備、実態把握と問題解決のための分野横断的研究の推進 、持続可能で安全な土地利用に向けた政策の推進と教育の充実に積極的に取り組みたい。人口の肥大、社会・経済の急激な変化、地球環境問題の深刻化、大規模自然災害の増大などにより、土地資源の有限性に関る問題が日本を含むアジア各地で深刻化しつつある実態が益々明らかになっているが、それに関する社会の認識はまだ低く、データ整備や関連する研究も遅れている。このような状況の改善に資する研究成果を今後も発信する。特に東日本大震災から得た教訓をアジアだけでなく世界の持続可能な土地利用の形成に活かせるよう、国際的発信にも尽力する。 前述のように、日本学術会議は会長の陣頭指揮の下に、ICSU/ISSC等が提唱している地球環境研究の新しい世界的な枠組みである Future Earth に取組む体制を作り始めているが、本研究の代表はそのコアメンバーの一人に選任されている。またオール学術会議で2012年秋に設置された「災害に対するレジリエンスの構築分科会」の委員長として、災害に強い国の建設に向けた学術会議提言の取りまとめを委ねられている。これらの重責を果たすためにも、本研究の直接的成果とそれから得られた知見を活かしつつ、持続可能な世界を目指すFuture Earthの我が国における旗艦プロジェクトを実現し、その中に本研究を発展的に組み入れたいと考えている。
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