研究課題
本年度は計画最終年度にあたり、研究の取りまとめを中心に行った。これまで開発してきた70 GHz帯の高感度受信機は、国立天文台野辺山45 m望遠鏡に搭載され、定常的な運用状態となった。この装置を用いて、重水素化分子(DCN, DNC, DCO+, C2D, DN2+など)の基本遷移を代表的な星なしコアと低質量星形成領域で観測し、超微細構造線の強度解析から重水素濃縮度を精密に決定した。重水素濃縮度は化学進化の重要な指標として広く使われているが、その観測的決定においては励起温度の正確な見積りが必要であることが示された。また、同様にこれまで開発してきた0.9/1.5 THz帯の受信機は2011年度に引き続きASTE 10 m望遠鏡に搭載して観測を行った。2011年度にはスペクトル線測定に成功したが、本年度は、受信機自体のトラブル、および、天候による観測実験期間の短縮のために、観測データを得るには至らなかった。しかし、立ち上げ、運用における問題点を洗い出し、一部解決することができたので、今後の定常運用に目途をつけることができた。これらと並行して、ALMA、ASTE、および野辺山45 m電波望遠鏡による観測研究を展開した。ALMAでは、初期科学運用(Cycle 0)のデータを解析し、低質量原始星L1527において原始星円盤形成に伴う劇的な化学変化を初めて検出する成果を挙げた。回転しつつ落下するエンベロープガスが遠心力バリア(半径100 AU)で滞留し、そこで局所的な加熱が起って化学組成を変化させていると見られる。遠心力バリアは原始星円盤形成の最前線と考えられ、その意味で、原始星円盤形成を初めて捉えたと言える。この遠心力バリアの存在の一般性を確かめるために、遠心力バリア近傍に局在するSO分子のASTEを用いたサーベイ観測も行った。いくつかの候補天体を見出し、ALMAの観測提案に反映させた。
25年度が最終年度であるため、記入しない。
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