本研究では宇宙の初めから起こってきた超新星爆発からのニュートリノ(「超新星背景ニュートリノ」)を観測する手段を確立することを目指す。その手段とは、スーパーカミオカンデ実験装置に中性子を同時計測する機能を付加し、超新星背景ニュートリノによる反電子ニュートリノ反応の際に発生する陽電子と中性子を同時計測することによって真の現象を選び出すことである。中性子を同時計測するために、スーパーカミオカンデに約0.2%のガドリニウム化合物を溶かし、中性子がガドリニウムに捕獲される時に放出されるガンマ線が発するチェレンコフ光を使用する。そのため、スーパーカミオカンデにガドリニウム化合物を加えても問題はないか(例えば、水の透過率を悪くすることはないか、など)をあらかじめ調べておかなければならない。また、現在の純水装置はすべてのイオンを取り除くシステムであるため、ガドリニウムを保存しながら、それ以外の不純物を取り除く水純化システムを構築しなければならない。そのために、試験用水タンクを作り、フィジビリティーを探るのが本研究の目的である。研究期間2年目である本年度は、1年目に製作された試験用タンクの試験、水純化システムの設計および建設、水の透過率を測定するシステムの建設を行った。特に、純水を用いて水純化システムと試験用タンクとの間の循環試験を行い、安定にシステムを運転させることができた。次年度のはじめにはガドリニウムを溶かした水を用いて循環試験を行う予定である。透過率測定システムも予定通り組みあがり、純水の透過率を測定してほぼ期待通りの値が得られている。次年度のガドリニウム水循環試験によってガドリニウム溶液の透過率を測定できる見込みである。
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