反電子ニュートリノは陽子と反応すると陽電子と中性子を生むため、これらを同時計測できれば過去の超新星からの反電子ニュートリノを検出することができる。具体的な方法としては、スーパーカミオカンデ(SK)の純水に約0.1%のガドリニウムを溶かし、中性子がガドリニウム(Gd)に捕獲される時に放出されるガンマ線を捉えることを考えており、そのため、純水にGd化合物を加えても水の透過率が極端に悪くならないこと、測定器を腐食させることがないことなどを確認する必要がある。本研究の目的は、試験用タンクを使ってこれらを調べることである。通常の純水装置はすべてのイオンを取り除くように設計されているが、Gdを溶かした水の場合には、Gdを保持しながら、水を純化しなければならない。本年度はこれまでに構築した200トン試験用タンク、水循環システムを使ってGd水の透過率を測定した。光の透過率の指標として15mチェレンコフ光が走った場合に光電子増倍管で捉えられる光量を用いており、それをLL15mと表記する。まずステンレス製タンク、構造体による影響を調べるために光電子増倍管等を取り付ける前に0.1%のガドリニウム溶液を200トン試験用タンクに作り測定した。その結果、LL15mとして69%という値が得られた。一方、超純水のLL15mは81.4%であり、これらを比較してガドリニウムによる影響は84%に相当する。2013年夏に200トンタンクに光電子増倍管(PMT)の取り付けをおこない、SKを完璧に模擬した試験セットアップを構築した。2014年3月まで純水を使っての作業後の汚れの除去、水循環装置の純化性能試験、純化方法の開発をおこなった。また、PMTのデータ収集システムの構築、キャリブレーションなどもおこなった。そして、Gdを溶解させてSKを完全模擬したセットアップでのGd水の透過率を測定した。
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