研究課題
中性子EDM測定の系統誤差は、主に中性子の運動に起因する幾何学的系統誤差(GPE)である。このGPEは磁場勾配に起因し、容器の直径の2乗に比例する。GPEは磁場が軸対称の場合、磁場勾配に起因する磁気共鳴周波数のシフトで求められるので、我々のEDM測定では、軸対称磁場を発生する球面コイルを用いる。2009年度は、現超流動ヘリウム(He-II)型超冷中性子(UCN)源で、小さなRamsey共鳴容器と球面コイルを用いて、Ramsey共鳴の実験を行い、共鳴曲線の測定に成功した。現在、共鳴の感度向上に努めている。容器の直径を小さくすると、UCN密度を上げる必要がある。このため、第2世代のHe-II UCN源の製作を開始した。これまでのUCN源では、保存系では位相空間密度は不変であるというLiouvilleの定理により、UCN密度は制限されていた。我々の現He-II UCN源では、スパレーション中性子源内にHe-IIを設置し、He-IIフォノンの位相空間を用いて、Liouvilleの定理に制限されることなく、中性子を効率よく冷却し、超冷中性子を発生させている。UCN密度増強には、中性子束の増強、UCN貯蔵寿命の増大、そしてUCN取出し効率の増強が必要である。2009年度は、中性子束を上げるため、陽子ビームの増強に耐え得るスパレーション標的、中性子を減速する熱中性子モデレータ、そして、冷中性子モデレータを製作した。そして、UCN取出し効率増強のため、水平型He-II容器を製作した。また、GPEをさらに小さくするため、バッファーガスの核スピン磁束計の可能性を研究した。
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