研究課題/領域番号 |
21224008
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研究機関 | 大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構 |
研究代表者 |
村上 洋一 大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構, 物質構造科学研究所, 教授 (60190899)
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研究分担者 |
中尾 裕則 大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構, 物質構造科学研究所, 准教授 (70321536)
雨宮 健太 大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構, 物質構造科学研究所, 准教授 (80313196)
久保田 正人 日本原子力研究開発機構, 量子ビーム応用研究部門, 研究副主幹 (10370074)
岩佐 和晃 東北大学, 大学院・理学研究科, 准教授 (00275009)
石原 純夫 東北大学, 大学院・理学研究科, 准教授 (30292262)
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キーワード | 電荷秩序 / スピン秩序 / 軌道秩序 / 共鳴X線散乱 / 中性子散乱 / 遷移金属酸化物 / 軌道混成効果 / 多極子秩序 |
研究概要 |
本研究では、強相関電子系(π-d電子系・3d遷移金属化合物・4f多極子秩序系)を対象として、外場(磁場・圧力)を加え、局所的な電子自由度秩序構造と遍歴的な電子自由度秩序構造の変化を直接観測することにより、これらの系の新奇な物性(磁気抵抗効果・金属絶縁体転移・マルチフェロイクスなど)の発現機構を明らかにすることを目的としている。本年度は、下記のような成果が挙がった。 1.RVO3の軌道・磁気秩序に対する圧力効果とランダムネス効果 RVO_3はt_<2g>軌道に軌道自由度を持った系で、基底状態として2種類の軌道秩序構造を示す興味深い系である。この系におけるユニバーサルな温度圧力相図を決定することに成功し、基底状態を決めているパラメータとして、Rd、V3d、O2p軌道の共有結合性の重要性を指摘した。 2.マンガン酸化物薄膜の電荷・軌道・磁気秩序状態 人工超格子(LaMnO_3)m(SrMnO_3)_mで報告されている積層周期mに依存した電気伝導性の起源を明らかにするために、積層させた結果としてのMn価数状態を共鳴X線散乱手法により決定した。その結果、伝導性を支配しているのが試料作製時の積層精度に依存することや、Mn価数状態の決定法を確立した。磁場印加に伴う系の金属化の起源を微視的に解明するために、局在的・遍歴的電子であるMn3d,O2pの電子状態を共鳴軟X線散乱により区別して観測することに成功した。 従来の薄膜をはるかに超える誘電分極を示す新たなマルチフェロイック物質YMnO_3が発見された。この大きな分極の起源を探るために、通常の放射光X線回折実験により系の格子歪状態とともに、磁気構造の決定を行った。 3,超伝導磁石搭載型軟X線2軸回折計 本研究課題の目標である磁場下での共鳴軟X線散乱実験を実施するために建設を進めてきた世界初の超伝導磁石搭載型軟X線2軸回折計の製作を完成させた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
我々は現在、KEK物構研の中に設立された構造物性研究センター(H21年度より発足)に所属して研究を展開している。本センターでは多くの構造物性研究者が日々議論をして、最新の重要な物理に取り組む研究体制が整えられてきた。このため、本研究も当初の予想を超えた研究内容に発展するテーマが数多く出てきた。特に、放射光・中性子・ミュオンというマルチプローブを相補利用することに関しては、極めて有利な状況にあったため、当初の計画以上に進展したと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
昨年度までに立ち上げを行った超伝導磁石搭載型軟X線2軸回折計を利用して、強相関電子系(π-d電子系・3d遷移金属化合物・4f多極子秩序系)の機能発現機構の解明を行う。特に、下記の物質系に集中して研究を進める。1.マンガン酸化物薄膜の巨大磁気抵抗効果の起源2,希土類充填スクッテルダィトPrRu4P12での金属・絶縁体転移と多極子秩序3.マルチフェロイック系の磁場、電場による相制御と物性発現機構の解明4.スカーミオン格子の観測5.スカーミオン格子の観測6.TPP[Fe(Pc)(CN)_2]_2における巨大な負の磁気抵抗効果
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