研究概要 |
電界による超伝導探索として、今年度は、前年度両極性伝導の実現に成功した遷移金属ダイカルコゲナイドMoS2を選んでEDLTデバイスを作製した。その結果、電子ドープ領域で電界誘起超伝導の実現に成功した。キャリア数の増加に伴い絶縁体―金属体転移が発現し、金属状態を経て6x10^13 cm-2を超えたところから臨界的に超伝導が現れた。Tcの最高値は10.8 Kであり、よりキャリヤ数の大きい領域で発現する化学的にアルカリ金属ドープしたMoS2よりも高く、且つ遷移金属ダイカルコゲナイド系超伝導体の中で最高の値である。この成果は、Science 338, 1193 (2012)に出版された。 強相関電子系バナジウム酸化物VO2を取り上げ、室温近辺において3~4桁の抵抗変化を伴う1次相転移型モット転移を、電界で制御することに成功した。構造相転移を伴う電子相転移を電界で制御できることを示した顕著な結果である。しかも、電界の遮蔽長(1 nm以下)よりもはるかに深い70 nm程度まで構造転移が及んでいることを実験的に示し、構造転移を伴う1次転移のトランジスタは、従来型のトランジスタとは全く異なる動作をすることを明らかにした。この成果は、Nature 487, 459 (2012)に出版された。 有機半導体ペンタセン、ルブレン単結晶とイオンゲル膜からなるEDLTを作製し、電極を電子注入が可能なカルシウムを用いることによって、電子も正孔も注入できる両極性トランジスタを実現した。しかも、電子電流と正孔電流の立ち上がりの電圧の差から、バンドギャップを求めることができることを示した(Advanced Materials 24, 4392(2012))。さらには、イオンゲルの柔軟性を生かして、MoS2によるフレキシブルトランジスタを作製した(NANO LETTERS, 12 8 (2013))。
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