研究課題
地震の準備と発生の詳細を震源の極至近距離で観察し、地震発生の物理をより深く理解したい。得られる知見を、地震発生のより正確な予測に生かしたい。このような試みを、自然の大地震を対象に地表付近から行うことは、技術的・時間的に非常に困難である。しかし、マグニチュード(M)2程度の地震(約100mサイズの破壊)をターゲットとした場合、南アフリカ(以下南ア)の大深度金鉱山ならば、2~3年の間に極至近距離観測によって非常に貴重な知見を得ることができる。想定震源付近のドリリングは70本以上、総延長2.8kmになり、前例のない規模の観測網の構築が完了した。鉱山のルーチン地震観測では検知できなかった、面状微小破壊活動の詳細が高応力岩盤や弱面で明らかにされ始めた。人手によるP波・S波の読み取りでは処理しきれない数十万個のデータを、高い処理能力を持つ自動震源決定アルゴリズムを導入して処理することが可能になった。応答周波数帯域が微小破壊センサーよりも低いが、周波数によらず応答が一定な加速度センサーのデータと比較することによって、震源メカニズムを決定でき、M > 約-4の微小破壊の規模別頻度分布を得ることができることがわかった。また、後者は、鉱山地震観測網で検知されるものとは特徴が異なることがわかった。南アは応力測定技術が開発され多くの測定が行われているが、出版済みの測定結果は、地表下2.7kmまでに限られ、最大主応力も100MPa以下であった。南アで、現在金を採掘している中で最も深い地点(地表下3.4km)、および、M1.5の被害地震(地表下約3.0km)の近くでの146 MPa という最大主応力の測定に成功した。震源の近傍での大強震動のデータを得ることができた。震源貫通ドリリングのコアの輸出が完了し、室内実験が始まった。4鉱山に埋設された計9台の石井式歪計のうち、最も長い記録期間は2年を超えた。
2: おおむね順調に進展している
秋の長期ストライキのため入坑・維持作業ができない期間が2~3ヶ月に及ぶ鉱山もあり、中断した観測が一部に生じたり、採掘の遅れに伴って地震の活発化が遅れる等があった。しかし、過去にない規模で構築された観測網の全ての項目の観測が始まり、本研究でしか得られない成果(上述)得られ始めた。
蓄積されつつあるデータ解析を進め、成果発信に重心を移す。南アフリカ金鉱山ではドリリングの質が低く、現場が大深度で竪坑から遠いことが多く地下現場の作業可能時間が短い。このため、従来の測定方法では、岩盤応力を効率的に測定することがこれまで容易ではなかった。日本の測定方法を南アの条件に最適な形で導入することによってこの問題を解決した。震源付近での応力や強度を議論できる様、測定体制や資材調達方法を確立し測定例を増やす。
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すべて 雑誌論文 (6件) (うち査読あり 5件) 学会発表 (6件) 備考 (1件)
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