研究課題
地球中心核に関する物質科学的知見は限られており、「地球中心核の形成過程」に関しては、近代的かつ定量的な進化モデル構築には至っていない。本研究課題では、研究推進グループが実用化した次世代レーザー試料導入装置を超高感度プラズマ質量分析法に組み合わせた次世代超微量元素分析法と、研究分担者が培ってきた世界最高の超高温・高圧実験技術を組み合わせることで、地球中心核での元素分配・元素挙動に関する正確かつ基盤的な物質科学的知見を引き出すことを目的としている。本年度は、独自に開発した波長変換超短パルスレーザーアブレーション試料導入装置の試料セル形状に工夫を加え、分析感度の向上と信号の安定化を図った。さらに新規導入した次世代磁場型プラズマ質量分析計に、新たに高レスポンス電荷蓄積型ファラデー検出器を組み合わせることで、ナノグラムレベルの微量元素から、主成分元素までを同時に分析することが可能となった。さらに本年は、本研究を通じて合成した金属標準試料を用い溶融分配実験を進めた。本研究で開発した元素分析装置を用いることで、金属相の溶融部分と固相部分を区別して親鉄性元素を分析することが可能となり、の二相間での分配係数(分配比)を決定することができた。この実験から、いくつかの親鉄性元素に関しては、明瞭な圧力依存性が確認できた。さらに本年度は、同位体効果に関する基礎実験も始めた。本研究で開発した液中レーザーアブレーション法(LAL法)を用いて、模擬試料として隕石に含まれる微小金属相の鉄同位体分析を行った。その結果、二次的な風化生成物の混入を排除し、隕石形成過程を反映した鉄同位体組成情報を引き出すことが可能となった。この技術を応用することで、超高圧実験で回収される微小サイズ試料からも正確な鉄同位体分析が可能となり、超高圧条件下での同位体効果を評価できるものと期待できる。
1: 当初の計画以上に進展している
本研究は、立案時の研究計画調書に掲げた研究計画に沿って予定通りに進めることができている。研究を遂行する上で生じた問題(均一な金属標準物質が入手できない)に関しても、研究代表者が14年にわたり所属してきた東京工業大学の研究ネットワークを活用することで、迅速に対処することができた。常に研究を前倒しで進める姿勢で取り組んだことが、結果的に研究計画が遅延なく進行できた理由だろうと考えている。
本研究を推進する上で基軸となる「超高圧発生技術」と「超微量元素分析技術」については、それぞれ研究分担者である広瀬と研究代表者である平田が、重点的かつ独立に開発を進めてきた。それぞれの得意分野を、さらに掘り下げることで、大きな技術改良が達成できたが、その一方で、技術開発の独立性が先行し、結果的に研究開始の3年間で連名の学術論文発表ができていない。研究計画立案の段階からある程度は予想された事態ではあるが、共同研究としては反省の余地があろう。今後は、連携研究者である小木曽による研究フィードバックや、相互の情報交換を加速するワークショップの開催を行うなど、関連学術分野を巻き込んだ研究活動を行い、さらなる研究展開を図りたい。
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