研究課題/領域番号 |
21224013
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
平田 岳史 京都大学, 理学(系)研究科(研究院), 教授 (10251612)
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研究分担者 |
舘野 繁彦 東京工業大学, 理工学研究科, 助教 (30572903)
廣瀬 敬 東京工業大学, 地球生命研究所, 教授 (50270921)
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研究期間 (年度) |
2009-05-11 – 2014-03-31
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キーワード | 地球中心核 / 親鉄性元素 / 超高感度質量分析計 / 超高圧発生技術 / 微量元素分析 / 局所領域分析 / ダイヤモンドアンビルセル / 元素分配実験 |
研究概要 |
昨年度までの研究開発により、分析装置の開発・実用化と、正確な定量分析を行うための金属質標準物質の調製が完了した。本年度は、中~高圧条件下(常圧~20GPa)での系統的な元素分別実験を進めた。まず高圧実験および化学分析の繰り返し再現性を評価する目的で、同位体条件下での分配実験を複数回行い、実験で決定する分配係数値の不確定性を見積もった。また、常圧~中高圧条件下に関しては分配係数の硫黄(S)濃度依存性が報告されているため、これらの文献と同一条件で分配実験することで本実験の信頼性の評価を行った。先行研究との比較の結果、分配係数の硫黄濃度依存性は先行研究と調和的であり、本研究の高圧実験技術および化学分析手法の信頼性が高いことが実証できた。予察的な実験では、多くの親鉄性元素の固相-液相間での分配係数が硫黄濃度に応じて大きく変動することが明らかになるとともに、タングステン、モリブデンなどについては強い圧力依存性がある可能性が示唆された。一方で硫黄含有量が少なくなると液相と固相の境界が不明瞭になり、分配係数の決定が困難であることも明らかとなった。この問題を回避するために、本年度は試料の加熱部分全体に対して微量元素マッピング(分布分析)する分析法の開発と、画像化するソフトの開発も進めた。このマッピング技術により、固相-液相の境界を正確に捉えることが可能となり、より信頼性の高い分配係数の決定が可能となった。さらに本年度は研究費の追加配分を受けた。この追加措置により、新たに高感度天秤の導入と、改良型レーザーセル(直線フロー型セル)の製作を行った。高感度天秤を用いることで、標準物質の認証値の精度・信頼度を大きく改善することができた。また改良型レーザーセルは、フェムト秒レーザーの特性に最適化した設計を行い、試料エアロゾルの滞留を大幅に低減でき、分析感度を更に高めることができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本年度の研究計画では、分配係数決定の物理化学条件の選定を目的とした超高圧実験と化学分析を行うこととなっていた。これまでの予備実験を通じて、分配係数の圧力及び化学組成依存性が元素によって大きく異なることが明らかとなったが、その一方で、分配係数の変化が小さく地球化学的議論に応用するには、さらに高い精度での分配係数決定が必要であることも明らかとなった。この問題が生じた元素は惑星核の形成を議論する上で重要な元素であるため、研究推進上、対処しなければならない課題となっていた。この問題に対し、追加配分により導入した新型セルと高感度天秤が大きく貢献した。これらの装置導入によって、分配係数の分析精度が改善でき、わずかな変化を正確に捉えることが可能となった。さらに独自に開発した微量元素マッピング分析法により固相-液相境界が明瞭に区別できるようになり、分配係数の信頼性も飛躍的に改善された。こうした性能改善の結果、分析対象とする全ての元素について分配係数の決定が可能となった。既にいくつかの元素に対しては中~高圧条件での実験を開始しており、ダイヤモンドアンビルセルを用いた超高圧実験も、一部前倒しで予備実験を進めることができた。
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今後の研究の推進方策 |
研究計画最終年度であるため、本年度は広い物理化学条件での系統的な超高圧実験を進めるとともに、得られた結果から分配係数の圧力・化学組成依存性を用いて、惑星核の形成過程に制約条件を付すことを目指す。超高圧実験や化学分析に関しては、研究計画に沿って順調に進展しているが、研究の展開としてはデータの公表、論文化、アウトリーチ活動にも力を入れる(平成25年度の「ひらめき☆ときめきサイエンス」活動に採択)。また本研究は「今後10年間は持続可能な最先端化学分析法の開発」を目指しているため、超高圧地球化学だけではなく、他の学問分野(地球化学、鉱物学、岩石学、生命化学、物質化学など)への応用展開が期待できるため、より広い分野の学会・講演会等での発表や技術提供にも積極的に取り組みたい。
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