研究課題/領域番号 |
21225001
|
研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
川合 真紀 東京大学, 大学院・新領域創成科学研究科, 教授 (70177640)
|
研究分担者 |
白木 将 東北大学, 原子分子材料科学高等研究機構, 講師 (80342799)
高木 紀明 東京大学, 大学院・新領域創成科学研究科, 准教授 (50252416)
上羽 弘 富山大学, 理工学研究部(工学), 教授 (70019214)
金 有洙 理化学研究所, Kim表面界面研究室, 准主任研究員 (50373296)
|
キーワード | 表面・界面 / プローブ顕微鏡 / 電気伝導 / 分子振動 / スピン / 吸着 / 化学反応 |
研究概要 |
STMを用いた分子接合による電気伝導計測を進めた。Nb探針とPb基板を2つの電極とし、吸着したC60分子を挟んだ接合についてIV測定を行った。超伝導ギャップ内に多重アンドレーフ反射によるサブハーモニクス構造が観測された。異なる配向のC60分子について、スペクトル形状の比較をしたところ、伝導チャンネルの数と透過係数に違いがあることがわかった。Ag(100)表面に創成したMgO薄膜における水の解離反応について、MgO薄膜-A、g基板界面のデフェクトや不純物の役割を第一原理計算で検討した。酸素欠陥や酸素不純物、Mg不純物が界面にあると解離反応の障壁が下がることが明らかになった。欠陥や不純物による反応性の制御に道を拓くものである。Au(11)表面において鉄フタロシアニン(FePc)分子を磁性不純物として近藤効果が発現する。第一原理計算と数値繰り込み群およびトンネル顕微分光により、近藤効果の発現メカニズムを調べた。オントップに吸着したFePc分子では、S=1のスピンが、2段階で近藤スクリーニングされること、また、軌道自由度が生き残りスピン自由度とカップルしてSU(4)近藤効果を起こすこと、がわかった。一方、ブリッジ種では、吸着サイトの対称性のため軌道自由度は凍結し、その結果、吸着サイトにより近藤効果の対称性に違いをおよぼしていることがわかった。Au(11)電極基板におけるフッ化フラーレン(C60F36)の吸着状態を調球た。分子の電子親和性が高いことから、Au基板から電荷移動により吸着状態が安定化されること、また、分極したCF結合とフラーレンのπ電子系との間に働く分子間相互作用により、超構造が安定化されることを明らかにした。励起状態にある分子からの発光を観測するための光検出STMシステムを立ち上げ、GaAs基板から原子分解能での可視光発光の検出に成功した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
4つの研究目的、(1)振動励起とそれに伴う分子反応のメカニズムをさらに詳しく調ベアクションスペクトルの解析法の確立、(2)励起状態の緩和過程において放出される赤外~可視域の光検出による新しい単分子計測法の開拓、(3)非弾性トンネル分光によるスピン検出と吸着場における分子スピンの振舞、(4)アンドレーフ反射を利用した電気伝導解析、について、(1)(3)(4)で成果が出ている。(2)についても、光検出型のSTMシステムを建設し、研究を進めている。
|
今後の研究の推進方策 |
4つの研究目的、(1)振動励起とそれに伴う分子反応のメカニズムをさらに詳しく調ベアクションスペクトルの解析法の確立、(2)励起状態の緩和過程において放出される赤外~可視域の光検出による新しい単分子計測法の開拓、(3)非弾性トンネル分光によるスピン検出と吸着場における分子スピンの振舞、(4)アンドレーフ反射を利用した電気伝導解析、(1)(3)(4)については、従来通り研究に取り組み、更なる発展を目指す。(2)は、大変チャレンジングな課題であるが光検出系の改良等をすすめていく。
|