本研究は、「水中での有機化学」という新学問領域の開拓と体系的発展を意図して行なわれた。水中での触媒的不斉反応の開発、水中で特異的に機能する触媒や炭素-炭素結合生成反応の開発など、多角的に設定された6つの課題に関し研究を行った結果、いずれの課題においても革新的な成果を得ることができた。特に、有機溶媒中では見られない、水中でのみ発現する反応性、選択性を次々に明らかにし、これまでの有機反応では用いられることの無かった金属酸化物や金属水酸化物が水中で極めて優れた触媒として働くことを見いだし、さらに、有機溶媒を全く用いない100%水中での不斉反応を実現するなど、「水中での有機化学」を大きく発展させた。
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